公益財団法人日本デザイン振興会 公益財団法人日本デザイン振興会

2026年度デザイン助成プログラム

2026年度デザイン助成プログラムは、2025年11月12日(水)〜2026年1月9日(金)の申請期間中、デザイン研究に15件、デザイン振興に21件の応募がありました。
有識者で構成する審査委員会が審査を行い、デザイン研究2件、デザイン振興2件を助成対象として決定しました。
研究・活動の成果は、助成期間終了後に公表する予定です。

助成期間: 2026年4月1日〜2027年3月31日(1年間)
助成金額: 50万円/件

助成対象一覧

デザイン研究

研究代表者: 中川 晃(芝浦工業大学 デザイン工学部 教授)
共同研究者: 内海 京久(⾼知⼯科⼤学 経済・マネジメント学群 教授)
研究タイトル: ⽇本企業におけるインハウスデザイン組織の進化とデザイン経営: DeNAを事例とした全社横断型デザイン組織の機能分析
研究概要: 株式会社ディー・エヌ・エーの全社横断型デザイン組織(=全社横断ケイパビリティ)を事例とし、インハウスデザイン組織が「下流の制作担当」に留まらず、意思決定品質(リードタイム/レビュー設計)と部⾨間整合や⼀貫性といった全社最適を⾼める組織として機能する因果過程の解明を⾏う。予備調査よりデザイナーが全事業に分散配置され、⽅針策定や要件定義の「上流段階」から関与、各事業成果に貢献していることが⽰唆された。
そこで本研究では以下の解明を⾏う。(1)下流の制作担当から全社横断ケイパビリティへと進化したプロセスと条件を⾒出す。(2)上流から下流の全領域における関与の構造と意思決定プロセスへの影響を分析する。(3)インハウスデザイン組織をデザイン経営の中核として機能させるガバナンスや資産化、育成・評価を導出し、指針を提⽰する。尚、DeNAは組織改変を背景に、分散配置と横断統括を進めた本研究に最適な先進事例である。
研究代表者: 清川 英恵(株式会社etomoji 代表取締役)
研究タイトル: プロジェクトみかん ―業務委託組織における文化醸成と成長基盤の実証研究―
研究概要: 株式会社etomojiは、全員が業務委託契約で関わるフルリモート組織であり、2026年1月には約40名体制となる。構成員の大半はデザイナーを中心としたクリエイターで、全国に分散して活動している。本研究は、業務委託のみで構成されたフルリモート組織において、文化醸成がどのような機能と効果を持つかを実証的に検証するものである。
具体的には、(1)文化醸成を通じて高いエンゲージメント状態を形成できるか、(2)エンゲージメントの向上がフリーランス個人の成長(技術・思考・ビジネス理解)および組織全体の生産性・業績に正の影響を与えるか、(3)文化醸成を教育基盤として機能させることで、フリーランスが受託者に留まらず、起業家・経営者候補へと進化する道筋を描けるか、という三点の仮説を検証する。

デザイン振興

活動代表者: 安積 伸(法政大学 デザイン工学部 システムデザイン学科 教授)
活動タイトル: 秋田県角館樺細工における伝統産業活性化のためのデザイン経営の実践的研究
活動概要: 本活動は、秋田県角館の「樺細工」を固有の文化的・経済的資源と捉え、デザインの力で持続可能な地域社会を構築する萌芽的な地域創造プロジェクトである。
大学研究室主導のもと、学生が職人や企業と協働し、デザイン経営の視点から製品企画、ブランド構築、を行い社会実装可能な提案を計画する。特筆すべきは、廃棄されてきた未利用材の活用と、地域社会との連携を構想に含んでいる点だ。これは資源循環を促すだけでなく、気候風土に根ざした素材の新たな価値創出と、地域コミュニティの活性化を意味する。
若い世代の感性とフィールドワークに基づく実効性の高い提案により、伝統産業を「現代の生活者が共感する日常の価値」へと昇華させる。本プロジェクトは、伝統技術の継承に留まらず、地域資源を核とした新産業創出と、住民の誇りを再興する「産学官民連携による地域活性化モデル」の提示を目的とする。
活動団体: 東海旅客鉄道株式会社
活動タイトル: 地域デザインリサーチモデル「 Local Research Lab 中津川」による、地域内古⺠家や公共施設を活⽤したプロトタイプ拠点創出とアクティベーション
活動概要: JR東海グループが運営する共創型ローカルメディアconomichiとKESIKIは岐⾩県中津川市との協働により、旧中⼭道宿場町である中津川宿およびその周辺市街地におけるまちづくり推進のため、2025年4⽉に地域デザイン推進モデル「Local Research Lab 中津川」を発⾜。地域内外の多様な参加者(ラボメンバー)を募り、中津川の潜在的な価値の探索のためのフィールドリサーチプログラムおよびそれに付随する発信活動を展開してきた。
2年⽬となる2026年度は、前年度に実施したフィールドワーク型のデザインリサーチによる街の価値のインサイトを⼟台に、ラボメンバーや地域プレイヤーとの継続的な協働のもと、中津川の街の政策や地域産業等におけるあるべき取り組みのアイディエーションとプロトタイプを推進する。上記実現に向けて、中津川において域内・域外の多様な⼈材に開放されたプロトタイプ拠点が必要であり、旧中⼭道の古⺠家等を活⽤した拠点の⽴ち上げとワークショップ等によるアクティベーションを実施する。

審査総評

デザイン研究

鷲田 祐一 一橋大学大学院 経営管理研究科 教授

本研究助成事業も2年目を迎え、昨年より増えて15件の応募があった。この事業が少しずつ社会に定着しはじめていることを実感し、審査委員一同、たいへんうれしく思う。今年の全体的特徴としては、昨年よりもいっそうデザイン経営の現実的問題に近い研究提案が増えたという印象だった。
助成対象に選ばれた1つ目のデザイン研究提案は、実在する企業のインハウスデザイン組織に着目し、全社横断型の組織と、各事業部に対応する組織を対比して、どのような違いがあり、どんなメリット・デメリットがあるのかを詳細にケーススタディするというものであった。この提案が掲げる問題は、日本のインハウスデザイン組織が長く抱えてきた問題であり、研究成果に大きな期待をしたい。
助成対象に選ばれたもう1つのデザイン研究提案は、業務受託型・リモート型の新しい働き方を持つデザイン会社における企業文化醸成というユニークな視点の研究であった。いままでのインハウスデザイン組織や通常のデザインハウス型の企業とは違って、高度に分散型の働き方を基本とするデザイン会社は今後も増加していく可能性がある。このような企業の新しいカタチに対して、デザインがどのように貢献しうるのか、というテーマは、時代性もあり、たいへん興味深い課題である。こちらも研究成果に大きな期待が集まるだろう。
企業経営の中で、広義なデザインがどのように活用され、どのような効果が期待できるのか、については、今後も幅広い視点から多様な研究を積み重ねていく必要がある。今年の助成対象になった2つの研究は、まさにそのような貴重なチャレンジである点が高く評価された。

デザイン振興

渡邉 誠介 長岡造形大学 造形学部 教授

昨年と比較して、今年度の申請は「デザインを通じた子どもの教育」分野を萌芽する申請が増加したことが特徴であった。しかしながら、今回採択された申請は次の2点となった。1点目はデザイン振興に「デザイン経営」を適用しようとする点で新規性が評価された案件、2点目はデザインを通じた地域づくり、まちおこしに関連する多様なステークホルダーとデザイナーたちが柔軟な形で座組されながら面的に展開が広がっていくこと企画されている点が評価された案件である。
「デザインを通じた子どもの教育」分野での申請は、様々な規模のプロジェクトの申請がそれぞれに大変魅力的であった。だが、まだ企画が充分に練られていない印象のものや、子どもの教育(探求)には、保護者、教育者、地域などさまざまなステークホルダーの座組が持続可能な形で提案されることが理想であるが、その点での書き込みが若干不足しているため上記の結果となった。
なお今年度の申請でもう一つ興味深い方向性があった。それは申請内容の「野性性」である。言葉を換えれば「元気度」といっても良い。地域のデザインを通した振興は、洗練されたものも当然期待されようが、外部から見れば突発的に地域に若い力によって産まれるものもあるだろう。こうした申請が多く見受けられたのは、審査する側からすると嬉しい事であった。可能であれば、その申請の中の何が「デザインの力」であるのかを、より自覚的に申請していただければと考える。こうした今回残念ながら採用されなかった案件も、次回以降再度ブラッシュアップした形でチャレンジしていただきたい。
今回評価された案件も、残念ながら選出されなかった案件も、すべからくデザインの力を通して、地域を愛し、子どもを愛し、地域を振興しようという萌芽的なものであった。その意味で、ぜひ活動を継続し、地域を巻き込み、拡大することが期待される。

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