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「目指すのは、六本木という都市づくりのプラットフォーム」—「六本木未来会議」編集部 井上ルミ子氏 インタビュー[後半]

2012年6月6日にスタートを切ったインタビューウェブマガジン「六本木未来会議」。デザインとアートを切り口として、さまざまなクリエイターに「六本木を変えるためのヒント」を問いかけ、読み物として公開し続けています。
「六本木未来会議」はどのような経緯で立ち上げられることになったのか。その想いを、同サイトの発起人でもあり、編集長を務める、東京ミッドタウンマネジメント デザイン&アートプロモーションチームの井上ルミ子さんに伺いました。



( 前半から続く)




読んでくれた人の「きっかけのスイッチ」を押す


デザイン、アートなんてぼくには敷居が高いな、と思う人もいるかもしれません。でも、そういう人にこそ読んでもらいたいという思いもあります。パリに旅行すると、普段は興味がない人もこぞって美術館に行くように、人は何かに触れることでスイッチを押されたり、感化されて行動に移すことがあります。それと同じことを六本木未来会議で体感してもらいたいんです。

実はみんながデザイン、アートの心を持っているのに、普段はそれが表に出ていないだけ。そのきっかけのスイッチを押す場になれば嬉しいですね。デザインやアートは特別なことというイメージもありますが、洋服を選んだり、お弁当のおかずを考えるのも、ひょっとしたらデザインという行為のひとつかもしれませんから。

また、六本木未来会議は情報を掲載する情報媒体ではなく「インタビューウェブマガジン」です。デザインやアートに関わるクリエイターたちへのインタビューを通して、客観的に六本木の街を考えることを目指しています。

かつての六本木は文化人の集まる街だったと言われています。後世にそう語り継がれているということは、当時は六本木だけでなく、街ごとの特色がはっきりしていたからではないでしょうか。いま、多くの都市はどんどんフラットになっています。どの都市を見ても駅前には同じチェーン店が立ち並び、どこでも何でも買える。「その街らしさ」が失われているような気がするので、六本木の街を舞台に「都心の街おこし」をしたいという思いもあるんです。

だからこそ、インタビューにはどういう街づくりをするべきかを考えている「クリエイター」に登場していただいています。六本木をこうしたい、都市とはこうあるべきだ、という意識を持った人に前面に出てもらい、その言葉から新しい都市らしさがリアルに立ち上がってくることを期待しています。








ミッドタウンだけではなく、六本木の街全体のメディアに


私が「街」を強く意識しはじめたきっかけは、かつて自分が暮らしていたパリでの経験がありました。パリでは、街のいたるところでアートにまつわるイベントやフェアが行われ、人々がそこに集い楽しむことで、都市の活力が生まれていると自分自身でも実感していました。その時の経験をもとに、東京でも人々を結びつける場をつくりたいと考えていた矢先、担当することになったのが、六本木アートナイトです。とくに初回は地域のみんなの手作りでやったようなところがあったので、その会合が町内会のような雰囲気だったんです。それをきっかけにいくつもの交流が生まれ、六本木ヒルズや国立新美術館の方々はもうご近所の人、という感じなんです(笑)。




六本木アートナイト



自分がどこかへ出かけようとするとき、銀座に行こうとか、新宿に行こうとか、どこかの「街」に行こうと思い浮かべることがありますよね。六本木未来会議の考え方としては、東京ミッドタウンだけでなく、「六本木という街」に来たくなるような情報を発信していきたいと考えているんです。

もちろんミッドタウンにも来てほしいのですが(笑)、エリア全体に共存するさまざまな魅力を伝えていくことで、ゆくゆくはその街の全員にとって良い、というものを描いていきたいんです。だからこそ、今後はもっと地域の方々と交流し、地域と連携できることをひとつでも多くやっていきたいと思っています。

新しい六本木と歴史的な六本木が融合して、地域の人にとっても、外からやってくる人にとっても面白い街にしていきたい。そのためのプラットフォームをつくりたいんです。

そのためにはウェブメディアを続けていくかもしれないし、ひょっとするとウェブは終了して、次はインタビューを通じて出た提案を、六本木の街で実現させていくプロジェクトになっていくかもしれません。

このウェブサイトは、あくまでも六本木という都市を形づくるためのプラットフォームのひとつです。クリエイターのみなさんによる提案から、ひとつでも多くの事例をつくり、それを街全体に広げていくことが、まずは当面の目標かなと考えています。



(了)





井上ルミ子(いのうえるみこ)
東京ミッドタウンマネジメント株式会社 タウンマネジメント部 プロモーティンググループ デザイン&アートプロモーションチーム/「六本木未来会議」編集部
1976年生まれ。中央大学総合政策学部を卒業後、英会話講師として就職。退職後、渡仏。フランス エクス=アン=プロヴァンス政治学院(Institut d'Etudes Politiques d'Aix-en-Provence)にてディプロムを取得後、英・仏の翻訳業務に携わる。2004年三井不動産株式会社入社。同社 東京ミッドタウン事業部を経て、2006年より現職。デザインやアートに関わる事業を担当。




六本木未来会議
http://6mirai.tokyo-midtown.com/



取材・執筆・撮影/福本創平(JDP)


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