公益財団法人日本デザイン振興会 公益財団法人日本デザイン振興会

【Report】空間の価値をどのように捉えるか − JCDデザインアワード審査会(後半)

(記事「前半」から続く)



最終的に、大賞を選ぶ段階ではそれぞれについて、意見が交わされました。

例えば、「風がみえる小さな丘」。いわゆる商業空間ではなく、インスタレーションとも言える、「モニュメント」。周辺に風に揺らぐ植栽などを施し、それら自然と同様に風にゆらぐ建物となっています。建築は風に立ち向かう、という従来の意識とはことなり「揺らぐ」という考え方が特徴的ながら、いま、この時期に「ゆらぐ」ということは違う意味をもってしまうのではないか?など。

また、傘庵については、五十嵐審査委員から「避難所内施設として使えたら良いのでは」という意見、近藤審査委員からは「小さくて透けてて持ち運べてそこで儀式が行われるという茶室への固定概念が理解できない。野点があるように、お茶はどこでも立てられる自由なもの」という、私たちのもつ「茶室」というイメージへのアンチテーゼも提示されました。

10年審査委員をつとめ、今年で最終年となる近藤委員は、委員長から10年間の所感を尋ねられて「ここ10年ほどのJCDデザインアワードは、大型ショッピングモールや大規模物件はでてこない。ローコストのインスタレーション的作品が多い。今年は最後なので、商業に関わっているものを残そうと思ってきたが、時代だから仕方がないのかもしれない。過去に有無を言わさず大賞を獲得した日産ショウルームなど、商空間のパワーをもったデザインを期待したい」との発言されていました。
また、近年、インテリアデザイナーよりも建築家の作品が上位に残ることが増えており、そのことについても「JCDはそもそも国土交通省管轄。国交省はもともと建築を管轄する省であり、JCDアワードを受賞するのが建築家だろうがデザイナーだろうが全く関係ないと思っている」と述べられました。



大賞の選出の際の議論で印象に残ったのは以下のような発言です。




上位賞に選出されたデザインを見ても、「空間の体験性」に価値がおかれはじめている。商業・物販とも、ネット販売が普通になり、システム、検索性を重視するならすでにネットが優位であり、そこに主眼が置かれた作品は選出されていない。自分だけが気になる商品を「発見する価値」や「体験の価値」。その店舗に行かないと分からない。そういうデザインが残った。
同時に、インスタレーションの要素の強い作品が多くのこり、危惧を覚える。商環境デザインを推奨するアワードにも関わらず、「空間デザインの喜びと商空間の価値」が議論されないままこういう結論になっていて良いのか? (中村委員)



デザイナーの置かれている状況からみても、コストなど商環境の置かれている事情で、差別化できる空間が創り込めない時期にあるのは現実。実際に「売上げ」を求められる仕事でもある。が、売れるかどうか、売れたかどうかの価値はこの賞には反映されない。
インスタレーション的作品であっても、街を歩いている時に、あれ?ちょっと覗いてみよう、なんだろう?と思わせる空間、空間の持つ不思議さやパワーが表現されているもの。それは商空間に必要な要素であり、そのような作品を選んだ。 (小坂委員)




また、近藤委員は、中村さんから発言のあった商環境デザインの賞としての在り方について「こういう審査委員の構成になっているから、こういう議論になるのは当然。この議論や選出の結果を、商空間をやっている人間が、どう捉え、どう考えていくか。それこそこの賞を実施する意味だ」と述べ、会場からは拍手と同意の声が上がりました。
これには飯島委員長も「もちろん、JCDではそういったことを目的にして審査委員を選んでいる。JCDいわばこの賞の興行主。そういう意味では、成功してると思っている。」と発言。賞の意義について、考えさせる場面もありました。

大賞は決選投票となり、
レッドライト・ヨコハマ3票、風がみえる小さな丘3票、ポリゴン・ピクチュアズ1票となりましたが、最後、ポリゴン・ピクチュアズに投じた近藤委員の次点票がレッドライト・ヨコハマへ。
最終的に「レッドライト・ヨコハマ」(デザイン・吉村靖孝氏)が大賞を受賞しました。


11時から15時過ぎまでかかった審査会も、委員長による審査総評で終了しました。曰く、
「審査の過程で商環境のデザインについて、様々な議論があった。賞としてはそれをし向けている。ただ、我々は日々リアルな仕事をしているのであり、来年も引き続き、そのなかでもポテンシャルの高い仕事が出てくることを期待したい」とのこと。



審査会がすべて終了したあと、東京デザインセンターがある五反田駅のロータリー内に突如出現したユニクロの仮設店舗を横目に見ながら、飯島委員長の総評にあった「商空間デザイナーが向き合わなければならない現場」を思いつつ、小雨のふる五反田を後にしました。






JCDデザインアワード2011
http://www.jcd.or.jp/designaward_2011/


記事/川口真沙美(JDP)


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