【開催レポート】本のある場所のつくりかた〜本と人の関係性をリデザインする〜/YOURS BOOK STORE×リエゾンセンター・ライブラリー
2019年4月、東京ミッドタウン・デザインハブにライブラリーが誕生しました。
▼関連記事
デザインと本で「つなげる」。リエゾンセンター・ライブラリーがオープンしました
今回は、9月24日(火)にリエゾンセンター・ライブラリーで開催したブックイベント「本のある場所のつくりかた〜本と人の関係性をリデザインする〜」の様子をお伝えします!
スピーカーとしてご登壇いただいたのは、ブックホテル「箱根本箱」や、入場料のある本屋「文喫六本木」など、“新しい本のある場所”を手掛ける日販のブックディレクションブランドであるYOURS BOOK STOREのおふたり。この日は「本のある場所の企画を考える」というテーマで、トーク&ミニワークショップを実施しました。
「街からどんどん書店が消えていく」「もう紙の本は読まれなくなった」という暗いニュースをよく耳にしますが、本当に「本の価値」は下がっていて、「本離れ」に歯止めがきかなくなっているのでしょうか?
もし多くの人にとって、本が魅力的なものではなくなっているとしたら、なぜブックカフェやブックホテルは賑わっているのでしょうか?
「本と読者の関係性を再定義しつつ、本のある場所にどんな機能や役割を持たせられるのか、考えを深めながらアイデアを共有できる機会になれば」という思いで今回のイベントが生まれました。
はじめに、ディレクターの染谷拓郎さんと有地和毅さんが、これまでどんなふうに本と人の出会いの場をつくってきたのか、それぞれのプロジェクトの紹介とともにお話してくださいました。
おふたりは、出版社と書店の間をつなぐ取次会社・日本出版販売株式会社で日々本と向き合う仕事をされています。
いまやイベントやメディア出演などで引っ張りだこの染谷さんですが、新入社員のころ初めての配属先で「自分が本当にやりたいことは?」と考えて悶々とする日々を過ごされていたそう。
当時のことを語った新聞記事の見出しは、図らずも「ダメ社員」になってしまったのだとか!
染谷さんの柔らかな語り口と、親近感がわくエピソードに、参加者のみなさんから笑みがこぼれます。
出版取次の前は5年間本屋に勤め、作家と書店員の手紙のやり取りを読める「#公開書簡フェア」などを企画し、SNSを活用しながら書店を盛り上げてきた有地さん。
「たとえば、積読本を自分の欲望の可視化ととらえるように、本を<読む>以外の方法で機能させる」「新しい場や体験をつくることで、本と人の関係性をリデザインする」というお話に、多くの方が頷きメモを取っていました。
出版不況といわれるこの時代、<本を読む>から<本を使う>へ、<読者>から<ユーザー>へという考え方は、新しい扉を開く鍵になりそうです。
同年代で、誕生日も近いというおふたりの掛け合いは、息がぴったり。心地よいスピード感で、今回のメインコンテンツであるワークショップに移ります。
まずは黙々と、ワークシート上の8つのマスを「本の持つ機能・価値・イメージ」にまつわるキーワードやイラストで埋めていきます。40名をこえる参加者のみなさんの姿は真剣そのもので、しんと静まり返った会場の雰囲気に圧倒されました。
そして近くに座っている人と2人1組になり、意見交換タイムがはじまります。「同じお題なのに、自分が書いた内容と全然違う!」「本を介して他の人の頭のなかを覗けて面白い」と熱気に満ち溢れていました。
次に、先ほど出た8つの要素を組み合わせたり膨らませたりしながら、リエゾンセンター・ライブラリーを舞台に「新しい本のある場所」についてのアイデアを考えていただきました。
常設の本棚や展示の企画から、ブックイベントのコンセプトまで、内容はさまざま。染谷さんと有地さんも、クライアントとの打ち合わせの場では、このような手法で企画を立てたり深めたりされるそうです。
最後は、ガラス一面に張り出されたワークシートをながめながら、お酒を片手に懇親会を行いました。
「本や読書が好き」「価値観をシェアできるような仕組みやコミュニティを作りたい」という共通の思いを持った参加者のみなさまは、夜遅くまで議論や交流をたのしんでくださっていました。
今回いただいたアイデアの一部を実現できるよう、スタッフ一同取り組んで参りますので、よかったらTwitterやFacebookで活動報告をチェックしてみてくださいね。
「箱根本箱」と「文喫」は、2019年度「グッドデザイン賞」も受賞しています。
・箱根本箱(グッドデザイン・ベスト100)
http://www.g-mark.org/award/describe/49672
・文喫 六本木(グッドデザイン・ベスト100)
https://www.g-mark.org/award/describe/49673
イベントを通して「本の新しい可能性」について教えてくださった染谷さん、有地さん、そしてライブラリーにお集まりいただいたみなさま、本当にありがとうございました!
今後もYOURS BOOK STORE×リエゾンセンター・ライブラリーで、定期的にブックイベントを開催する予定です。
▼プロフィール
染谷 拓郎(YOURS BOOK STORE プランニングディレクター)
日本出版販売株式会社2009年入社。グループ会社MPDへ出向し、CD・DVDの物流、仕入を担当。
2015年より現職。書店リノベーションや箱根本箱など本のある場所づくりを行う。
有地 和毅(YOURS BOOK STORE ブックディレクター)
日本出版販売株式会社2016年入社。あゆみBOOKS小石川店にて小説家との書簡を店頭で公開する「#公開書簡フェア」、SNSユーザー参加型の棚「#音の本を読もう」を実施。書店店頭を活用した本によるブランディング企画担当を経て、2018年より現職。 ブックディレクターとして選書ディレクション、コンセプトメイキングに携わる。