公益財団法人日本デザイン振興会 公益財団法人日本デザイン振興会

2015ミラノサローネ・Milano Salone Description報告会レポート

さる5月29日、東京ミッドタウン・デザインハブでMilano Salone Descriptionによる2015年ミラノサローネ報告会が行われました。登壇したのは、デザインジャーナリストの土田貴宏とクリエイティブディレクターの青木昭夫。デザインハブでのMilano Salone Descriptionの報告会は今年で3年目です。今回の報告会でも、サローネ会期中にフェイスブックページで現地の様子を伝えたふたりが、ミラノで注目のブランド、プロダクト、デザイナーなどについてあらためて語りました。

ミラノでは、毎年4月に約1週間にわたってミラノサローネ国際家具見本市が開催され、世界各国から約30万人もの人々が集まります。会場は郊外のロー・フィエラで、イタリアを中心とする家具ブランドが約2,000社も出展する世界最大規模のインテリアのトレードショーです。ここで特に注目されたのは、日本人建築家の長坂常を会場構成に起用したスイスのヴィトラ。輸送用のパレットを積み上げ、その上に製品を展示して、昨年までの完成度の高いスタイリングで世界観を伝える手法を一新しました。またフィンランドのアルテックは、ブランドの設立者のひとりである建築界の巨匠、アルヴァ・アアルトの家具からインスピレーションを受けたロナン&エルワン・ブルレックによる新作家具「Kaari」を展示。実力あるデザイナーが、あえて過去を参照しながら現代にふさわしいデザインを生み出すのは、今年のサローネで特に目立った手法です。イタリアのブランドでは、モローゾから発表されたリチャード・ハッテンやショルテン&バーイングスによる家具が、これまでの椅子のカテゴリーを超えるような形態だったのが目を引きました。新進デザイナーの登竜門として知られるサローネサテリテでは、デザインの流れを象徴するかのように、3Dプリンターを使った上海のデザイナーがアワードに輝いています。

1. VITRA / Jo Nagasaka  

2. ARTEK / KAARI / Ronan & Erwan Bouroullec

ミラノサローネ会期中は、ミラノ市内のあちこちで無数の新作発表やエキシビションが開催され、こちらはフオリサローネ(サローネの外)とも呼ばれます。報告会では、基本的にエリアごとに注目の展示を紹介していきました。企業系の展示が増えているトルトーナ地区では、今年のMilano Salone Descriptionをサポートしていただいた旭硝子が、その中心的な会場であるスーパースタジオピウに出展。映像が投影できるガラスなどを使い、日本の建築ユニットのアーテンバークを起用してインスタレーションを行いました。またトルトーナで特にインパクトが大きかったのが、マルセル・ワンダース率いるオランダのモーイの新作展。新たに発表されたカーペットのコレクションに加え、意外性のある演出が来場者を驚かせました。

3. ASAHI GLASS / GLACIER FORMATION / ARTENVARCH

4. MOOOI / FREAKY RUG / Bertjan Pot

サンバビラ駅の周辺は、カッシーナ、B&Bイタリア、フロス、ドリアデなどイタリアの名門ブランドのショールームが並んでいます。ル・コルビュジエによるスチールパイプ製の家具の復刻が50周年を迎えたカッシーナは、その家具がダンスを踊るように動き続ける展示が人々を引きつけました。またオーナーが交代したドリアデは、ミラノにも事務所を持つイギリス人建築家のデイヴィッド・チッパーフィールドがアートディレクターに就いて方向性を一新。コンスタンティン・グルチッチやエンツォ・マーリのデザインが、チッパーフィールド自身の設計による新しいショールームに映えていました。

5. B&B ITALIA/ BUTTERFLY / Patricia Urquiola

6. FLOS / SUPERLOON / Jasper Morrison

7. DRIADE / David Chipperfield, Konstantin Grcic, Enzo Mar

その他のエリアで、現地で大きな話題になったのはデザインギャラリーのニルファーがオープンさせた新しいスペース、ニルファー・デポでした。ニルファーは、現代の気鋭のデザイナーによるリミテッドエディションの家具や、世界各国のヴィンテージ家具など、希少価値の高いアイテムを扱っています。ミラノサローネに合わせ、巨大な倉庫のような場所をミラノのスカラ座をモチーフにリノベーションしました。オープニングにはミウッチャ・プラダらセレブリティが集まり、ニルファーから家具を発表しているデザイナーのマルティーノ・ガンパーが料理を振る舞ったといいます。日本ではなかなか実感できない本場のインテリア文化の力強さを実感せずにいられません。

8. NILUFAR DEPOT

また日本のnendoは、市内のペルマネンテ美術館全館を使って個展「nendo works 2014-2015」を開催。この1年間に手がけた200点もの新作や近作を展示し、その旺盛な発想力とボリュームで来場者を圧倒しました。展示のメインは、イタリアのガラス家具専門ブランド、グラスイタリアとの協業から生まれたアイテムです。接着、プリント、カット、彩色など、高度で多彩な板ガラスの加工技術を生かし、実用性に縛られることなく発想されたデザインの数々は、どんな形へ進化していくのか興味深いものでした。また日本はじめ世界各国の企業とコラボレーションしたプロダクトも展示。nendoの活躍が、近年の日本勢のミラノ出展のハードルをずいぶんと下げてくれたように感じます。

9. NENDO WORKS 2014-2015 / Nendo

10. MAGIS / SAMSON / Konstantin Grcic  

11. VITRA. / BELLEVILLE / Ronan & Erwan Bouroullec  

12. FRITZ HANSEN / SAMMEN / Jaime Hayon

13. CAESARSTONE / Philippe Malouin

14. EX.T / FELT, HAT, STAND / Norm Architects  

15. WONDERGLASS / MOMENTO / Nao Tamura

色や素材で注目されるのは、まずゴールド。クラシックな室内装飾を連想させること、エキゾチックなイメージと結びつくこと、アジアや新興国で好まれる色であることなどがこのトレンドの背景にありそうです。またファッションとの関連も窺えるグリーンやブルーもよく用いられています。昨年に引き続き、大理石やベルベット素材を使ったアイテムも多く見られました。その他のトピックとしては、ファッション系のブランドによる力の入ったプレゼンテーション、エットレ・ソットサスやメンフィスなどの80年代テイストのリバイバル、コントラクト市場を視野に入れたリーズナブルなプラスチックのシェルチェアの流行なども解説しました。

16. CALICO WALLPAPER/ INVERTED SPACES / BCXSY

17. NORWEGIAN PRESENCE

18.PAOLA LENTI  

19. MARSOTTO EDIZIONE

20.LOUIS VUITTON

21. KARTELL GOES SOTTSASS - A TRIBUTE TO MEMPHIS

22. B&B ITALIA / Papilio Shell / Naoto Fukasawa

報告会の最後に発表されたのは、ふたりが独断で選んだベスト3です。青木はルイ・ヴィトン「Objets Nomades」展、オランダの若手のグループ展「Dutch Invertuals」、nendo「nendo works 2014-2015」展。土田はミケーレ・デ・ルッキによるデスク「Studiolo」(UNIFOR)、デンマークの新しいブランド「KARAKTER」、マックス・ラムの椅子展「EXERCISES IN SEATING」でした。

23. UNILFOR / STUDIOLO / Michele de Lucci

24. KARAKTER

25. EXERCISES IN SEATING / Max Lamb

Milano Salone Descriptionは、2016年も今年までと同様にミラノからのリポートを行う予定です。土田と青木はともに以前からミラノサローネに足を運んでおり、ミラノ以外のデザインフェアを訪れることもあります。また日頃の活動では、異なる立場からデザインやものづくりに携わっています。こうした経験をふまえ、現在のデザインやインテリアの流れを読み解きながら、Milano Salone Descriptionを通じて価値ある情報を発信していきたいと考えています。
土田貴宏/青木昭夫(Milano Salone Description)



日時:2015年5月29日
会場:インターナショナル・デザイン・リエゾンセンター(東京ミッドタウン・デザインハブ)

Milano Salone Description 

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