公益財団法人日本デザイン振興会 公益財団法人日本デザイン振興会
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テーマ企業インタビュー:株式会社技光堂

2018年度東京ビジネスデザインアワード

東京ビジネスデザインアワード」は、東京都内のものづくり中小企業と優れた課題解決力・提案力を併せ持つデザイナーとが協働することを目的とした、企業参加型のデザイン・事業提案コンペティションです。

企業の持つ「技術」や「素材」をテーマとして発表、そのテーマに対する企画から販売までの事業全体のデザイン提案を募ります。2018年度は、テーマ9件の発表をおこない、10月25日(木)までデザイン提案を募集中です。

本年度テーマに選ばれた9社へのインタビューをおこない、技術についてや本アワードに期待することなどをお聞きしました。


特殊技術で印刷の新しい可能性を開く

お話:株式会社技光堂 代表取締役 佐野雅一氏 執行役員営業本部長 佐藤英則氏

立体感(エンボス調)のある印刷と金属調の印刷で、本物の金属と見間違えるほどの印刷を生み出すなど、新しい印刷の可能性を開く技術開発にも積極的に取り組む企業。アイデアを自由に発言できる社風で、生き生きと働く若い社員が多い環境は、新しいものが生まれる空気に溢れている。自社が開発するアイデアを生かした、一般の消費者向けの製品作りが期待されている。代表取締役 佐野雅一さんと執行役員営業本部長 佐藤英則さんに話を聞いた。


トライ&エラーを繰り返す中から生まれた金属調印刷技術

ーー御社の創業の経緯を教えてください。

先代が写真製版の会社として創業しました。板橋区のこの周辺には昔から印刷会社が多いエリアでした。オフセット屋さんも多く、かつては従業員が2〜3名でやっているような小さな規模の印刷会社が多かったんですよ。

ーー現在、工場もとても広く大きな会社規模なのですが、創業時も従業員は多かったのでしょうか?

いえいえ、うちも2〜3人からスタートした印刷会社でした。

ーー今回の応募テーマでもある「立体視・金属調印刷」技術を筆頭に、特殊印刷を手がけるようになったきっかけを教えてください。

当初はプリント基板の原版を作成していましたが、20年ほど前に原版だけでなく新たに自社でもシルク印刷を行うことを決めました。そこで他社との差別化のためにプリント基盤のシルク印刷ではなく、別方向のシルク印刷を行うようになったのです。弊社では「プロにはならない」というモットーがあります。これは、常に初心を忘れず、一つ一つのことを初めて取り組む気持ちでやっています。自分たちは素人であると思いながら、物事を決めつけず、自由な発想力を大切にしています。



ーーその理由を教えてください。

創業から考えると、スタートは素人の集まりだったからそうなっちゃったんでしょうね(笑)。何か新しいことをする時に、普通であれば出来る出来ないから入ると思うのですが、弊社の場合は何にでも、とりあえずやっちゃう。立体に見える金属調シールも、まず発想があって、とりあえずやってみたら出来ちゃった。言ってはみたものの最初は誰も出来ると思わなかったんですよね。

ーー逆にやってみたけど失敗したというものもありますか?

たくさんありましたね。トライ&エラーを繰り返しながらも手を動かすことが大切だと思います。

ーー「立体視・金属調印刷」について教えてください。

透明の樹脂素材を本物の金属にみせることが一番の特徴です。さらに立体感も表現しています。金属のヘアライン、スピン、バイブレーション、トタンなど金属の目に関しては本物とほとんど区別がつかないくらいのクオリティでは再現していて、金属と並べても違和感ないと思います。

ーー世の中にないものを生み出すモチベーションはどんなところにありますか?

普通だったら出来ないよということも思いついたのならまずやってみる。そのようなチャレンジ精神が弊社の社風です。

それと特殊印刷を出来ることが強みに結びつき、ここに頼んだら間違いないと思っていただけるひとつのきっかけにはなっていると思います。あと新規顧客開拓の際に、珍しいものがあるとお話すると、とりあえず会ってくださるんですね。弊社ならではの特殊印刷が大切な営業ツールにもなってくれているんですよ。


ーーどのような素材にこの金属調印刷を施すことが出来るのですか?

ペットボトルと同じペット素材が主流になります。事例が少ないのですがアクリルの板など平面なものにも印刷が可能です。それと透明なものですね。透明でないと金属調にならないんですね。金属調に使うインクである鏡面インクは透明な素材に裏から薄く塗って光ってくれます。素材に表から塗っても単に銀消しになってしまいます。だから必ず透明な素材でなければなりません。

ーー金属調印刷にはどのようなメリットがあるとお考えですか?

素材となる樹脂は金属に比べて安価ですし、量が多いものに関しては金属表面に加工をするよりも断然早く製作が可能です。ですので量産性があってしかも金属と比べてコストを押さえることも出来るメリットがあります。それと金型を作らなくてもいいので加工費が安くなります。しかも金属に比べて格段に軽いです。印刷面に別の印刷をすることも出来ますので、金属では出来ない表現をすることも可能です。デザインの幅が広がると思います。

ーー強度に関してはどうですか?

強いですよ。熱に対しても耐熱温度が80℃くらいありますので、インテリアなどにも使っていただけると思います。


ーー金属調に、+印刷で表現の幅を広げることができますね。

そうですね。表面にインクジェット印刷もできるので、表現の幅が広がると思います。例えば金属ですと凹凸のある表面にフラットな印刷をすることは出来ませんが、金属調印刷に関しては表面がフィルムなのでフラットな表現をすることが可能です。

ーー金属調印刷の導入事例を教えてください。

医療器の一部に貼るネームプレート、半導体製造装置のネームプレートに採用されたりと実績があります。このような金属調印刷が可能になったことをお客様に伝え続けたところ、開発・設計の方から要望が出てきて実際に製品化されました。

ーー既存のメタリック調印刷との違いはどのようなところにあるとお考えですか?

印刷表現で立体感が出せることですね。平面に影を付ける技術は結構難しいんです。


今持っている技術をより多くの人に伝えたい

ーー他にはどんなユニークな特殊印刷技術がありますか?

蓄光インクを使った蓄光印刷や、RGBインクといって光の三原色を表現する透明なインクで印刷をして、それにブラックインクを当ててカラー発色する技術もあります。これはなんでもない白い紙がブラックライトを当てることできれいなカラー発色します。これは見ていただくと結構びっくりすると思います。



ーーRGBインクを使った印刷はものすごく驚きがあって楽しいのですが、これはどのような利用が想定されますか?

ブラックライトが利用される状況は特殊なのですが、ナイトアクティブなどで利用したら面白いと思います。あとはテーマパーク、ホテルなどですかね。発色が想像以上に美しいんですよ。それから、イカ釣り。イカにはそのままでRGBインクが発光しているように見えるそうで、イカ釣り用のルアーにも使えそうですね。ブラックライトを仕込んだ熱帯魚の水槽にもいいですよね。

ーー印刷に付加価値を付ける取り組みを数多く継続されていますが、御社のものづくりへの思いを教えてください。

お客様に良いものを納めたいという思いが根幹にあります。お客様の作った製品や機械をさらに価値のあるものにすべく、世の中にないものも含め、良質な印刷物作りをしています。


ーーもの作りの面白さはどんなところにありますか?

お客様に喜んでいただけることを励みに頑張っています。世の中のより多くの皆様に弊社の技術を知ってもらいたいという思いがあります。うちの技術はまだまだ知られていないと思いますが、知っていただくことで皆さんの生活が少しでもより楽しく豊かになればとの想いで、ものづくりに励んでいます。

ーーさまざまな取り組みをされていますが、課題はありますか?

いろんなことにチャレンジはしているのですが、製品のアイデアや販路がないところが悩みです。

ーービジネスデザインアワードにはどのようなことを期待されますか?

弊社はB to Bが中心ですが、B to Cで一般の方に印刷の楽しさや感動を提案するためのきっかけになればと思い応募しました。

弊社には特別な技術があって、お客様に提案はさせていただくのですが、いいねで終わってしまうことがほとんどです。何に使っていいか分からないという声が多くて、デザイナーさんの力で世の中に出ていってくれたらいいなと思っています。現状ではお客様からご依頼をいただき、そのアイデアに基づいた製品を作らせていただいているのですが、それに加えて自社製品を作ることが出来たら、従業員一同励みになる部分が出て来るのかなと考えています。

また、私たちも自社製品を作ることに向けて、新しい部署を立ち上げ、社内の仕組みも積極的に変えていくなど頑張っていきたいです。極論を言えばそれは印刷には限定していません。とにかく新しいことをやりたいというモチベーションの高い会社ですので、自由な提案をしていただけると嬉しいです。

ーーデザイナーの皆さんへのメッセージをお願いします。

若いやる気のあるスタッフたちで、つねに新しいものにチャレンジしている会社です。お互いにいいものを出し合ってものを作ることが出来ればと思っています。


株式会社技光堂(板橋区)  http://www.gikodo.co.jp/

透明樹脂素材を立体的かつ本物の金属に見せる「立体視・金属調印刷」

1964年(昭和39)に製版会社としてスタートし、今では印刷に色々な付加価値を加えた特殊印刷を強みとしている会社である。業界のデジタル化が進む中、単なる印刷ではない特殊印刷のシルク印刷やオンデマンド印刷を先進の製版および加工技術と綿密に連携させ、今までにない製品を社内で一貫製作している。


インタビューと写真:加藤孝司



2018年度東京ビジネスデザインアワード

募集期間 10月25日(木)まで
応募資格 国内在住のデザイナー、プロデューサー、プランナーなど
応募費用 無料
詳細は公式ウェブサイトをご覧ください

https://www.tokyo-design.ne.jp/award.html


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