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テーマ企業インタビュー04:筑波鉄工株式会社

2016年度東京ビジネスデザインアワード

「東京ビジネスデザインアワード」は、東京都内のものづくり中小企業と優れた課題解決力・提案力を併せ持つデザイナーとが協働することを目的とした、企業参加型のデザイン・事業提案コンペティションです。
企業の持つ「技術」や「素材」をテーマとして発表、そのテーマに対する企画から販売までの事業全体のデザイン提案を募ります。2016年度は、テーマ11件の発表をおこない、11月4日(金)までデザイン提案を募集中です。

本年度テーマに選ばれた11社へのインタビューをおこない、技術についてや本アワードに期待することなどをお聞きしました。

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極太パイプ加工技術と地域ネットワークで新しい世界へ
筑波鉄工株式会社
お話=代表取締役 小柳雅彦氏

極太パイプの曲げ加工を得意とする専門メーカー。ものづくりの町、大田区で60年以上の実績を誇り、納入、切断から曲げ加工、穴あけ、溶接まで自社で一貫生産を行う。建設機械向け油圧配管パイプの製造を中心に、高精度の曲げ加工をスピーディーに低コストで仕上げることができる。長年の経験によって磨きあげられた技術はデザインの力によって新しい用途開発が期待されている。

ーー創業はいつになりますか?
創業は昭和25年、会社設立は昭和35年になり、私で3代目になります。筑波というのは創業者である祖父の出身が茨城県筑波で、それが社名の由来になっています。創業以来この土地に工場を置いて65年、おもにダンプトラック、ショベルカー、ブルドーザーなどの油圧配管を作ってきました。

ーー得意とする技術、独自の技術を教えてください。
パイプの切断、曲げ、穴あけ、塗装までの一貫生産が可能です。ほとんどの工場は、曲げなら曲げだけを行う、というように各社で分業しているので、私たちのように自社内で一貫生産できるところは少ないと思います。素材としては鉄、ステンレス、アルミ、鋼、真鍮などを曲げることができます。

ーー加工可能なパイプの大きさや曲げの角度等について教えてください。
パイプ径はΦ10~114.3mmまで可能です。これほど太いパイプを加工できる工場は国内でも数社だと思います。形状も丸形のみでなく、たとえば四角であれば専用の型を作れば加工は可能です。また、Rが小さくなるとパイプに亀裂が生じやすく曲げるのが困難になるのですが、「パイプ1D曲げ」というパイプ径と曲げRが約1対1の状態でパイプを曲げることができる加工も、当社の優位性のひとつだと思います。

ーー工場で拝見した径の大きなパイプをやすやすと曲げることができる機械は、どのような仕組みで曲げているのですか?
極小R曲げができるCNCパイプベンダーによる曲げ加工になります。小さい曲げになると曲がる部分の外側が薄く、内側が厚くなりシワになるのですが、外側の薄くなるところに圧力をかけてにくを盛っていき、やぶれないようにしています。逆に内側はシワがよってしまうので、ワイパーと呼ばれるシワ取りを使ってシワが出ないようにしています。それがほぼ一瞬かつ一度にできる機械になります。Φ40程度の細いパイプの1D曲げは自動車関係に多いのですが、ここまで太いものを曲げられる機械は国内でも比較的珍しく、関東に2~3台しかないと聞いています。
他にはパイプベンダーとして、NC機械が3台、半自動機が2台の計5台を当社では使用しています。

ーー60年以上の経験と実績を踏まえて、新しいことにもチャレンジしていこうとされていますが、「ものづくり」への思いを聞かせてください。
私たちが作った製品は全世界の建設機械に搭載されています。一番の思いは信頼できる品質をもった製品づくりができる会社でありたいということです。
今は建設機器メーカーとの仕事がほとんどですが、若い職人たちが比較的日常生活と近いところ、これが自分で手がけた製品だと分かるところで、当社の技術が役に立つことができればというビジョンを持ちながらものづくりをしています。

ーーB to Cに近いところでの取り組みはございますか?
ほとんど出来ていないのですが、昨年から当社で加工したパイプを使った製品の開発が進行中です。しかし、コストや在庫の問題などなかなか難しいところです。

ーー日本のものづくりは世界から注目を集め、値段が多少高くても付加価値のあるものをというニーズもありますね。御社の伝統あるオンリーワンの技術が伝わっていけば他にはないものづくりが可能なのではないでしょうか。
やはり日常に使うものでパイプというと、どうしても細い径のものになってしまいます。ですが私たちの得意分野は太いものなので、太いパイプでのものづくりができれば、多少投資してでも挑戦してみたいと思っています。逆にいえば細いパイプの加工は比較的どこでも可能です。太いパイプの加工を得意としている私どもの技術を活かしたものづくりができないかと模索しています。

ーー工場がある大田区は、リオオリンピックのジャマイカチームに採用された下町ボブスレーでも話題になり、ものづくりの町として世界的に知られています。今回のテーマ名には「地域ネットワークによる複合型の開発」とありますが?
昔から図面を描いて紙飛行機で飛ばせば、製品になって戻ってくるといわれるほど、今もものづくりが盛んな町です。削り、旋盤、メッキ、レーザーなどそれぞれの得意分野があるので、ものづくりであれば地域のネットワークを通してなんでも対応できます。

ーーベテランから若手まで、とても多くの方が働いていらっしゃいましたが、職人の方は何名いらっしゃいますか?
現在32名の職人が働いています。ありがたいことに技術もベテランから若手に継承されつつあります。意識の高い職人が多く、また自分が責任をもってやれる仕事を身につける気構えで入社してくれる方が多く、とても頼もしく思っています。

ーー東京ビジネスデザインアワードでどのようなことをしてみたいですか?
社員の新たなやる気に火をつけ、ものづくりに熱くなれるような、自分の仕事に誇りがもてるようなきっかけになれば嬉しく思います。先ほどの「下町ボブスレー」にも部品を提供したのですが、私たちはほぼ建機一本でやってきた会社です。家族や友達に、「あの商品うちで作っているんだよ」と言えるようなものが作れたら嬉しいですし、みなさんの暮らしに身近な製品つくることが、より一層品質にこだわった製品づくりをしていくきっかけに繋がると思います。

ーーデザイナーとどのようなものづくりをしたいですか?
デザイナーの方のアイデアで、東京の町工場でもこのようなものができるんだという、従来の町工場のイメージを覆すような製品を作ってみたいと思っています。例えば説明会や展示会などでお客様と話す際、この曲げは出来ません、とお答えするとそこで終わってしまうことがよくあります。ですが、これを作るためにこのような方法は可能ですか、とさらに深く聞いてきてくださる方もいます。そうすると私たちもそれに応えようという気持ちになります。なんとかしてこのパイプを使ってみたい、というエネルギーのある方と一緒に仕事をしてみたいです。ですがパイプ加工に興味をもってくださるだけでもとてもありがたいと思っていますので、なんでも気軽にご相談いただければと思います。

筑波鉄工株式会社(大田区) http://www.tsukuba-tube.co.jp
パイプの切断、1D(極小R)、複合、三次元の曲げ加工、溶接塗装まで一貫体制で行える。建設機械の油圧配管パイプ製造をメインに、手すりやガードなど多様なパイプ製品に対応、高精度の曲げ加工が可能である。

写真とテキスト:加藤孝司 Takashi Kato

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2016年度東京ビジネスデザインアワード
募集期間 11月4日(金)まで
応募資格 国内在住のデザイナー、プロデューサー、プランナーなど
応募費用 無料
詳細は公式ウェブサイトをご覧ください
http://www.tokyo-design.ne.jp/award.html

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