<REPORT> 2014ミラノサローネ・Milano Salone Description報告会レポート
ミラノサローネは、毎年4月にイタリアのミラノで約1週間にわたり開催される国際家具見本市です。同時期にミラノ市内の無数のスペースでさまざまなデザインイベントが行われ、世界中から数十万人もの人々が集まります。Milano Salone Descriptionは、その様子を現地からほぼリアルタイムで伝えるフェイスブックページ(https://www.facebook.com/MilanoSaloneDescription)として2013年にスタートしました。活動2年目となった今年はパナソニックのサポートを受け、ミラノサローネ会期中前後だけで計10万以上のページビューを達成しました。そして、昨年に続いて行われた今回のトークショーで、Milano Salone Descriptionを主宰するデザインジャーナリストの土田貴宏とクリエイティブディレクターの青木昭夫(MIRU DESIGN)が、ミラノで実際に見た展示について約2時間にわたって語りました。
ミラノサローネは、イタリアの家具ブランドの新作展として50年以上にわたる歴史を持っています。国際家具見本市の本会場はミラノ郊外にあるロー・フィエラで、ここにはイタリアの主要家具ブランドを中心に数千社もの企業が出展し、今年の新作を一斉に発表。インテリアのトレンドが、ここから発信されます。しかしミラノサローネの醍醐味は、それだけではありません。ミラノ市内で行われる展示は、国内外の家具ブランドの展示に加え、デザインに力を入れている他業種のインスタレーションから、チャンスを求めてミラノを目指す無名のデザイナーや学生のプレゼンテーションまで、きわめてバラエティに富んでいます。その圧倒的な規模と多様性こそ、他のどんな都市のデザインイベントよりもミラノが注目を集めている理由です。
1. Cassina / 藤本壮介
トークショーでは、まずミラノサローネ会期中にどんなエリアでどんな展示が行われているかを解説しました。家具ブランドのショールームが多いミラノ中央部、広大なスペースを使って企業や団体の大規模な展示が行われるトルトーナ地区、時代を先んじるようなデザイナーや学校単位の展示が多く行われるヴェントゥーラ・ランブラーテなど、エリアごとに傾向があるのもミラノの特徴です。今年はサン・グレゴリオ・ドケトという新しいエリア型展示もスタートしました。ロー・フィエラの国際家具見本市については、カッシーナ、モローゾ、ヴィトラ、アルテック、マルニ木工といったブランドを紹介。新作家具だけでなく、展示空間のデザインなどにも触れ、家具の魅力をどう見せているかにも話が及びました。また見本市に併設された、若いデザイナーの登竜門として重要な役割を果たすサローネサテリテについても、日本人デザイナーの出展をはじめ数組の展示を紹介しました。
2. Artek / Konstantin Grcic
3. マルニ木工 / 深澤直人
ミラノ市内の展示は、フォーリサローネ(「サローネの外」という意味)とも呼ばれます。フォーリサローネのレポートはミラノ大学からスタート。ミラノ大学では例年、「インテルニ」誌の企画により、イタリア内外の企業、建築家、デザイナーらがかかわって大規模なインスタレーションがいくつも行われます。パナソニックはトラフ建築設計事務所を起用して「スライディング・ネイチャー」という引戸をテーマにした展示を開催。アトリエ・ワンを起用したYKK-APの展示や、大理石の構造体を制作した隈研吾の展示も注目を集めました。その他に市内中心部で話題になった日本企業の展示には、シチズン、レクサス、ダイキンなどがありました。特に、パリを拠点に活動する建築家の田根 剛(DGT)とシチズンによる展示は、市内のすべての展示が対象となるMilano Design Awardで2部門を受賞する快挙を成し遂げています。
4. CITIZEN / DGT
5. Panasonic / トラフ建築設計事務所
6. Hermès
Milano Salone Descriptionは、家具ブランドの新作のリポートももちろん行っていますが、さまざまな展示の中から未知のブランドやデザイナーをピックアップすることに力を入れています。今回のトークショーでも、日本で有名な家具ブランドがあまり取り上げられないことを不思議に思った方もあったかもしれません。それは、数カ月後に日本に入荷する新作家具の情報よりも、ミラノでしか知ることのできない新しいデザインの動きやトレンドをきめ細かく紹介したいという思いからです。こうした情報は日本の雑誌で紹介されることも限られ、今までなかなか触れることができませんでした。しかし一方、海外のデザインメディアに目を向けると、Milano Salone Descriptionが取り上げるような先見的なデザイナーの活動に注目が集まっているのは確かです。トークを行ったふたりは、デザインに対する立場もものの見方も違いますが、そんな最新のデザインから何かを読み解こうという共通した意識を持っています。
7. Rick Tegelaar
8. Formafantasma
9. Max Lamb
10. ECAL
11. Bar Basso
トークの最後では、Milano Salone Descriptionが選ぶ各分野のベストを紹介。ベストチェアはフランス人デザイナーのロナン&エルワン・ブルレックがマティアッツィから発表した「Uncino」、ベストファニチャーはイスラエル出身のロウエッジズが母国のシーザーストーンとコラボレーションした「Island」、今年の注目素材の大理石を使ったアイテムについては吉岡徳仁さんの「Agravic」と、計10ジャンルを独断で選定させていただきました。2時間で150枚の写真を説明するのは少々無理があったようで、後半はかなり駆け足の紹介になってしまいましたが、それでも現地で見た展示のほんの数分の一でしかありません。日本からミラノサローネを見に行くデザイン関係者は、決して少なくないとはいえ、まだ一部でしょう。しかしヨーロッパでは、学生の頃からあの膨大な情報量を直接目の当たりにできるわけです。そのギャップを少しでも埋めるために、今後も情報発信に取り組んでいきたいと思います。ミラノサローネを見ずにデザインやインテリアを語れないとは決して思いませんが、この業界で国際的に最も大きな吸引力を持つ場であることは確かなのです。
土田貴宏/青木昭夫(Milano Salone Description)
12. Mattiazzi / Ronan and Erwan bouroullec
13. Caesarstone / RAW EDGES
日時:2014年5月14日
会場:インターナショナル・デザイン・リエゾンセンター(東京ミッドタウン・デザインハブ)
Milano Salone Description
https://www.facebook.com/MilanoSaloneDescription