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地球環境問題に代表されるように、私たちの暮らしている社会は、苦渋に満ちた課題や解決不能とすら思われる難問に満ちています。思わず挫けそうになりますが、こうした難しい課題に直面した時、私たちは不思議な力を発揮してきました。誰かがすばらしい解答を見いだし、それを多くの人々が共有することで、人類は難問を乗りこえてきたはずです。その方法とは客観的とは言い難いかも知れません。しかし誰もが納得できる解答なのです。近代社会が発展していく中で、こうした「人と人を結ぶ素朴な回路」がないがしろにされてきた、このことが社会的課題を一層深刻にさせたようにも思います。
この「素朴な回路」を回復させるために、デザインのもつ「呼び覚ます力」を活用すべきではないでしょうか。
デザインに内在するこの力によって、デザインは個別的な解答であることを越えて、社会全体の解題を共有し解決していくメディアともなるのです。またメディアであるがゆえに、一人一人の問題解決もより社会性を帯びたものとなります。
デザイン振興を専門とする機関の役割は、この「メディアとしてのデザイン」を強化していくこと、そのことによって「人と人を結ぶ素朴な回路」を修復していくことに他なりません。
まず私たちは、解決すべき課題があることをさりげなく呼びかけます。様々な人々の自主的なデザインを促します。そして産みだされた無数のデザインを相互に検証できる場へと引き出していくことで、社会的課題解決や難問を解決していく糸口を創りだしていきます。糸口が見えれば一人一人のデザインの焦点も合ってきます。「素朴な回路」を強化しつつ、一人一人のデザインの力を向上させていくこと。回り道かも知れませんが、これこそ私たち自身の生活を豊かにする方策であり、社会的な課題をスマートに解決していく最良の方策なのです。