公益財団法人日本デザイン振興会 公益財団法人日本デザイン振興会

テーマ企業インタビュー:株式会社ミヨシ

2020年度東京ビジネスデザインアワード

「東京ビジネスデザインアワード」は、東京都内のものづくり中小企業と優れた課題解決力・提案力を併せ持つクリエイターとが協働することを目的とした、企業参加型のデザイン・事業提案コンペティションです。企業の持つ「技術」や「素材」をテーマとして発表、そのテーマに対する企画から販売までの事業全体のデザイン提案を募ります。

2020年度は、テーマ9件の発表をおこない、113(火・祝)までデザイン提案を募集中です。本年度テーマに選ばれた9社へのインタビューをおこない、技術についてや本アワードに期待することなどをお聞きしました。


お話:株式会社ミヨシ 澤田博之氏 田中秀氏

1972年の創業以来プラスチック製品の試作や小ロット生産に携わってきた会社。長年アルミ金型製作を手がけてきた実績をもち、金型製作から成形までを自社内で一貫して行うことができるという強みをもつ。小ロット生産にも対応するフットワークの身軽さと高い技術力はすでに多くのエンジニアやデザイナーからの信頼は厚い。


環境負荷軽減にも取り組み真摯なものづくり精神

ーー今回の企業テーマについて教えてください。

当社では「捨てられないものづくり、人の役に立つものづくり」を企業理念に掲げ、資源やエネルギーを適切に使いものづくりで社会を豊かにし、人類発展のお手伝いをしたいと思っています。現在プラスチックのゴミ問題が地球規模で問題となっており、プラスチック製のストローやゴミ袋の削減に国も取り込んでいます。プラスチックをつくること=大量生産大量消費ということになるのですが、弊社では長年試作品づくりをしてきたところから、こまわりの効いた小ロット生産を得意としています。必要な数を必要な人にひとつから使っていただくという生産スタイルを確立し、素材にはセルロースナノファイバーなどの環境負荷軽減のプラスチック、石油ではなく植物由来のプラスチックの使用にも取り組んでいます。ものづくり、素材の両面から環境負荷の軽減をしていければと考えています。 

ーーお客様も環境負荷軽減の材料を利用する方は多いのですか?

ご相談いただくことが多くなっています。たとえばセルロースナノファイバーを使ってなにかをつくりたいといったご相談をいただくこともありますし、開発材を使用した試作にも関わらせていただいています。生分解性プラスチックを使用したいというご相談をいただくこともありますが、小ロットの量産に使う場合、現状ですとどうしても費用が相対的に高くなってしまうこともあって、大手企業さんよりも個人やベンチャー企業の方からのご相談のほうが多いです。

ーーそういった意味では今回のテーマである射出成形に用いるマテリアル選びに柔軟に対応していただけるというところは御社とものづくりをする強みになりそうですね。

はい。開発材に関しては成形機の調整を手探りで行うことが多く、どのような素材か豊富な知識を持っているので、試作品に対して最適な素材のあたりをつけることができます。

ーー設備についてお聞きしたいのですが、御社が所有する金型に安定してインサート物をセットすることができる希少な成形機について教えてください。

40tの竪型成形機になります。一般的な機械は金型を左右から挟み成形する横型成形機なのですが、それだと設置したものが金型が閉まる際に動いてしまったり、最悪外れてしまうこともあり極めて慎重に設置する必要があります。ですが弊社の竪型成形機では上下にはさみ込む形で成形をします。設置するものがズレにくいことはもちろん、小さなものでも安定してインサート成形がしやすいというメリットがあります。金属製の端子を多数入れても成形もしやすい成形機になります。

ーー竪型成形機ではどのようなものをつくることが多いですか?

自動車部品のコネクタなどの試作品をつくることが多いです。竪型成形機をもっていることでお客様にも安心して仕事を任せていただいている実績があります。

ーー御社の射出成形技術では製品はどのくらいの大きさのものまで対応が可能ですか? 

小さな製品ですと10ミリ角から、大きなものですとA4用紙サイズまで、厚みは60mm程度まで対応します。




自社の工場で金型の製造から成形まで一貫生産 

ーー御社が製作に携わられたヒューマノイドロボットキットRAPIROは比較的大きなパーツで構成されていますが、成形はどのように行っていますか?

大きなパーツからなる頭部は2分割してつくりました。パーツを分割をすることで大きなものまで弊社内で成形をすることができます。

ーー色についてはいかがですか?

色のついた成形材料を取り寄せることで基本的にはどのような色でも可能です。色に関してはお客様からご希望をいただいてから再現しますので、色見本帳やサンプルをお預かりして材料の商社さんに色をつけてもらいます。メーカーさんに色をつけていただくこともあります。

ーー扱える樹脂は主にどのようなものがありますか? 

ABSPP,PE、ポリカーボネートなど一般的なプラスチックと呼ばれる材料はだいたい扱っています。あとは自動車部品によく使われるPBTやガラス繊維が含まれている樹脂、PBSという生分解性プラスチックという特殊な材料も弊社では扱っています。

ーー珍しいものですとどのようなものをつくっていますか?

小ロット品の延長線上では先ほどお見せしたロボット、Iot機器、医療関係品、ホビー関係品もつくっています。珍しいものだとフィギュアの目を金型でつくったことがあります。あとはセルブリッドといって木を砕いた木粉にPPなどを複合したウッドプラスチックでポケットティッシュケースをつくりました。木が入ることでより硬化するという副次的な効果があります。それと金型の表面に模様を彫り込み成形することで、製品の表面に細かい表現をすることができるテクスチャーによる加飾技術もあります。


ーー建築の型枠みたいなもので素材に模様をつけるんですね。御社ならではの技術面での強みを教えてください。

試作品づくりに携わっているので、業種問わずいろいろな方と協働できる喜びがこの仕事にはあります。

弊社ではカセット金型では共用できるパーツを社内規格で製作しており、製品に関わる部分のみを製作し中身を入れ替えて成形する仕組みを確立しています。そうすることで製作にかかる初期費用を抑えて製作することができます。それとアルミの磨きの技術も得意としています。

材料に関してもこういった材料を使ってみたいというご相談にも積極的にお応えしています。


気づきがもたらすデザインの可能性を信じて

ーー今回のアワードでは澤田さんと田中さんがパートナーとなり一緒に進めていただくかたちになりますか?

はい。私たち二人を中心に対応させていただきます。

ーーアワードでの製作に関して協力会社の対応も可能ですか?

可能です。弊社がある葛飾区は下町の町工場として知られていて、近隣にいろいろなものをつくっている会社さんがいます。これまでも弊社だけでは対応しきれない部分に関してはご協力をお願いしています。印刷、塗装、パッキン製作など、私たちでは手が回らない部分での金型製作に関してもご協力いただけるメーカーさんがいます。

ーー現状どのようなことをアワードに期待されていますか?

弊社としては製造を得意としているのですが、これまで物を売るということをしたことがありません。最近ECサイトを立ち上げましたが、今後もっと自社でつくったものを個人のお客様に届けていきたいという希望を持っています。今回のアワードではその部分も実現できればと思っています。


ーーどんなデザイナーと出会いたいですか?

弊社の理念に共感していただき、一緒に考えてものづくりをしていただけるデザイナーさんと一緒に取り組んでいきたいと思っています。デザイナーさんと協働してつくったものをお客様にお届けする流通までお力をお貸しいただければ嬉しいです。

ーーものを伝えるところですね。

はい。私どもでつくったものを伝えるところまでできたらと思っています。

ーービジネスモデルとしてオリジナルブランドを立ち上げるなどの構想はありますか?

もちろんそれを視野に入れています。そしてものづくりだけでなく、ブランドのブランディングまで一緒に関わらせていただければと思っています。


ーーデザイナーのプロのデザイン力に期待することはどんなことですか?

2013年の葛飾ブランドに認定していただいた製品で、デザイン会社と「Resiina-R」と「Resiina-Cいう、角R(角の曲面)とC面(角の面取り)のサンプルを板チョコの形状に見立ててつくったことがあります。その時に自分たちが普段あまり気にせず当たり前に思っていたことが、デザインの力で可視化することができ、しかもコミュニケーションのツールにもなることを知りました。

そのときデザインの力でこんなことができるんだと感銘し、今回のビジネスデザインアワードに参加してみたいと思った経緯があります。今回のアワードでの取り組みにもデザインの力で私たちが思いつかないようなアイデアを期待していまからワクワクしています。

ーー問題解決にデザインが使われた好例ですね。

そう思います。私たちの業界にいるだけでは思いつかないアイデアってまだまだたくさんあると思うんです。些細なことでも構いませんので、こんなこともできるのでは?という気づきのような言葉をいただけると、そこから商品開発が広がると思っています。

株式会社ミヨシ(葛飾区)https://www.miyoshi-mf.co.jp

テーマ:環境負荷を軽減したプラスチック材による「射出成形技術」

1982年設立以来、金型製作を主に、射出成形、部品加工、金属試作品製作、治工具製作、設計業務などを行う。主な製作実績としては自動車弱電装部品、包装容器、家電、ロボット、医療機器、研究機関などの樹脂部品、評価用部品などで小ロット生産を得意とする。社長が技術士のため技術育成に力を入れており、社員全員がQC検定2級~4級を取得。また、環境マネジメントシステム「エコアクション21」に取り組んでおり、作業環境の改善を行いながら、環境に配慮した材料で、環境に配慮したものづくりを目指す。 

インタビューと写真:加藤孝司


2020年度東京ビジネスデザインアワード

デザイン提案募集期間 113(火・祝)まで 

応募資格 国内在住のデザイナー、プロデューサー、プランナーなど 

応募費用 無料 

詳細は公式ウェブサイトをご覧ください

https://www.tokyo-design.ne.jp/designer/

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