公益財団法人日本デザイン振興会 公益財団法人日本デザイン振興会

テーマ企業インタビュー:有限会社精工パッキング

2019年度東京ビジネスデザインアワード

東京ビジネスデザインアワード」は、東京都内のものづくり中小企業と優れた課題解決力・提案力を併せ持つクリエイターとが協働することを目的とした、企業参加型のデザイン・事業提案コンペティションです。企業の持つ「技術」や「素材」をテーマとして発表、そのテーマに対する企画から販売までの事業全体のデザイン提案を募ります。2019年度は、テーマ9件の発表をおこない、10月27日(日)までデザイン提案を募集中です。

本年度テーマに選ばれた9社へのインタビューをおこない、技術についてや本アワードに期待することなどをお聞きしました。


お話:有限会社精工パッキング 取締役社長 平井秀明氏

元は活版印刷機を改良し、ビクトリア型を使用した打抜き加工を長年手がけ、2021年には会社設立50周年を迎える精工パッキング。機械を知り尽くし長年培ってきたその技術を独自に応用し、誰もが思いつかないような斬新な発想から生まれたのがシリコンゴムを用いた0.2ミリという極細の輪ゴムである。先代まではいわゆる下請け会社としてのカラーが強かったが、多様化していく未来を見据えて自社企画でさまざまな製品を開発。現代表の平井秀明氏が代表に就任以降、それまでの事業を継承しながらオリジナル商品開発や、クラウドファンディングなど様々な取り組みにチャレンジし続けている。


触れていることを忘れる細さの輪ゴム

ーー今回の応募動機を教えてください。

弊社が開発した世界で一番細い輪ゴムを使って、何かあたらしいものを作れないだろうかということで提案させていただきました。

ーー現在どのくらいの細さまで作ることができるのですか?

究極では0.2ミリまで作ることができます。ですがそれだと細すぎて切れやすくなってしまうため、現在では世界で一番細い0.3ミリの輪ゴムとして売り出しています。

ーー細くてしなやかな輪ゴムですが、その開発の背景を教えてください。

2015年に社長に就任したのですが、その時に思ったのが、会社の知名度の低さでした。会社の経営体制の見直しにあたり、試行錯誤をしていくなかで、ある時工場の床に一本の細いゴミが落ちているのを見つけました。弊社では刃型を使った型抜き加工をしているのですが、落ちているゴミをよくみたら抜き損じで出た細いゴムでした。偶然出来たものですが、それを見たときに、これって意図的に作ることができるのだろうかと思って作ってみたところ簡単に出来てしまいました。

紐状の細いゴムは簡単に出来ましたが、輪っかにしたらどうだろうと思ったところから、0.2ミリの極細輪ゴムが出来きました。その輪ゴムで葛飾区の葛飾ブランドに申請したところ、弊社の「ビクトリア加工技術」ということで登録していただいたという経緯があります。

ーーそんな開発秘話があったんですね。型抜きを得意とされている精工パッキング さんの輪ゴムは輪の状態で抜くものなのですか?

みなさんが普段使われている通常の輪ゴムは、筒状のゴムを輪切りカットして出来ています。実はそれって世界的みても特殊技術なんですね。それとあの輪ゴムは素材に天然ゴムを使っているのですが、そのため時間が経つと劣化します。それで私どもとしては劣化しにくい高級な極細輪ゴムということで、シリコンを素材にしています。製造法としては平面のシリコンの板を輪に抜いて作っているのですが、そうすると真ん中がゴミになります。それでなるべく無駄がでないように細長い形のものをオリジナルで開発しました。

ーーなるほど。それって世の中にはないものですよね。

ないですね。私が調べたものの中では極細の輪ゴムで0.8ミリ幅のものがありました。

ーー実際に作られてどのような用途を想定されていますか?

面白そうだということで作り始めたものですから、開発当初は用途は考えていませんでした。それでまわりの方に、用途を考えてくださいと見せてまわることから始めました。触っていただくと分かるのですが、触っていることを忘れるくらいの細さなんですね。ですので付けていることが気にならない、という用途があるんじゃないかと考えはじめました。

それで最初は怪我をしたときやクリームを塗った上に巻いたガーゼをとめるという用途を考えて製品化してみたのですが、それは全然売れませんでした。

シリコンゴムには伸びがいいという特徴があり、そして切ろうと思えば簡単に切れるけど普通の輪ゴムと比べて切れにくいという特徴があります。その特徴を活かしたものとして、最近マスクのゴム紐用に少し大きな輪ゴムを作成しました。今回のビジネス・アワードでも極細輪ゴムをクローズアップしそこからさらに活かしたもの、あるいはまったく異なる発想であたらしいものが作れないだろうかと期待しているところです。

ーー御社では普段はどのようなものを作っていますか?

工業用品がほとんどです。創業としてはデザイナーでもあった祖父が平井美術印刷として創業した会社でした。その後、父がその時使っていた印刷の機械や技術を用いて立ち上げた抜き加工を専門にする会社が、現在の精工パッキングになりました。

長年下請けとして成り立っていた会社ですので、特に営業をすることもなく技術だけを溜め込み、太いパイプをもったお客様とだけ仕事をしてきました。主に作っているのは家電の内部部品に使われるパッキン、吸水シート、一時多く手がけていたものにPHSのマイク部分の水滴吸水シートがあります。ですが私たち自身何を作っているのか分からないものが実は一番多いです(笑)。そんなこともあり、オリジナル商品としてこの極細輪ゴム、そしてポレットという商品を作り始めたという背景があります。

難しい図面の方が気分が上がります

ーー御社の技術ではどんな素材を加工することができますか?

ゴム素材を中心に、鉄、ガラス以外のものはありとあらゆる素材に挑戦はしているのですが、平面状のものでしたら基本つくることが出来るというのが特徴です。ゴム、不織布、樹脂、両面テープ、ウレタン、スポンジ、紙、ファイバーも加工したことはあります。鉄は出来ないと言いましたが、薄い銅箔のようなものでしたら加工することができます。特殊なものですと、刃の高さを変えることで台紙を残しながらシールと台紙を抜くことができるのですが、弊社では微妙な高さを変えながら3段で細かく抜くことが出来ます。

ーーそんな平井さんのこの仕事の面白みとはどんなところにありますか?

ウチの仕事の場合、お客様からこれを作って欲しいと素材と仕様書が送られてくることが多いのですが、実はよくあるのが、これを作るにはどうすればいいのか?という仕事なんですね。お客様自身がつくり方が最初からない形で相談されることがあります。

私としても難しい図面を見た時のほうが気分が上がるというか、それに対してウチの技術を使ってこうできますと提案して実現できたときはこの仕事のやりがいを感じます。実はものづくりって、どんなに難しいものでも一つだけであれば、職人さんが時間をかけて丁寧に作ればできるかもしれません。ですが私たちの仕事はそれを量産しなければいけません。コストもありますし、いかに簡単に、それでいてきちんとしたものを作れるか?それが当たり前の世界なんです。

ーーお持ちの設備を教えてください。

ビクトリア型型抜き一本です。むしろ型をどうするかが重要で、そのやり方のほうが特殊ですね。ビクトリア型ともうひとつシール専門で抜くような刃の低いピナクル型というのがあって、機械によって作るものを変えることが出来ます。

ーー大きさはどの程度のものを作ることが出来ますか?

600mm幅で、もう一方は400~500mmくらいのものであれば 加工はしやすいです。小さいものですと極細輪ゴムもそうですが、1.5mmほどの穴の加工もしています。それと小ロットにも対応出来ます。

ーー成形と比べて抜き加工の利点を教えてください。

初期投資が圧倒的に低いところです。成形ですと型代に50~100万円ほど掛かりますが、ビクトリア型ですと1万〜15万円ほどで作ることができます。

ーーものづくりをする上で当面目標にしていることはありますか?

以前自分がオリンピックを目指して水泳をやっていたこともあって、ひとつはオリンピック、なかでもパラリンピックに何か貢献できないかなと思っています。そのためにも自分たちが有名にならなければそのチャンスもないと考えています。

今回のビジネスデザインアワードもそうですが、まだ準備段階というところではあるのですが、自分たちからの情報発信という意味も込めて、少しずつオリジナルなものづくりを行っています。それと最近では量産は海外で、というところが多いので、試作や一点ものの制作にも積極的に取り組むようにしています。弊社ではそれを「新製品開発支援サービス業」と位置付けて仕事をしています。最近ですと主婦で発明家の方が考えた虫取り網を作りました。そんな相談も大歓迎です。

ーーデザイナーへのメッセージをお願いします。

やわらかく止めるこれまでの輪ゴムとは使用用途がまったく異なる極細輪ゴムを活かしていただけるような、引き出しをたくさん用意してきていただけると嬉しいです。ウチにしか出来ない技術で、思いもしなかったようなアイデアをお待ちしています。

有限会社精工パッキング(葛飾区)https://www.seikopacking.tokyo

テーマ:世界最高レベルの「極細シリコン輪ゴム製造技術」

1961年創業の59年目。部品加工が大半を占め、葛飾区で「ビクトリア型」を使用した平板打抜き加工を専門に行っている町工場。±0.2㎜という厳しい寸法精度を徹底し、長年にわたりクライアントの信頼を確立している。初代代表の世代から勤めた職人は定年退職を迎え退社しているが、離職率が低く、現代表の27年の在職期間の中で途中退職した従業員はいない。創業当初から残業ゼロを推進し、定着率に繋がっている。

インタビューと写真:加藤孝司


2019年度東京ビジネスデザインアワード

デザイン提案募集期間 10月27日(日)まで 

応募資格 国内在住のデザイナー、プロデューサー、プランナーなど 

応募費用 無料 

詳細は公式ウェブサイトをご覧ください

https://www.tokyo-design.ne.jp/award.html

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