テーマ企業インタビュー:第一合成株式会社
2019年度東京ビジネスデザインアワード
「東京ビジネスデザインアワード」は、東京都内のものづくり中小企業と優れた課題解決力・提案力を併せ持つクリエイターとが協働することを目的とした、企業参加型のデザイン・事業提案コンペティションです。企業の持つ「技術」や「素材」をテーマとして発表、そのテーマに対する企画から販売までの事業全体のデザイン提案を募ります。2019年度は、テーマ9件の発表をおこない、10月27日(日)までデザイン提案を募集中です。
本年度テーマに選ばれた9社へのインタビューをおこない、技術についてや本アワードに期待することなどをお聞きしました。
お話:第一合成株式会社 営業部 吉田廉氏、執行役員 設楽文法氏、製造技術部 平井恵美氏
昭和50年に合成樹脂専門商社として創業した会社。昭和58年に新事業として静電気対策製品の開発に取り組み始めると、製品輸送や保管用のテンバコ、ダンプラ箱製造の分野における長年の研究開発により、静電気対策分野でのリーディングカンパニーといわれるまでに成長する。また文化財保護・活用に関わる製品の販売でこの分野でも注目されている。工業部門と文化財部門という二本の柱に、近年森林部門が加わり、その3部門にまたがるダンプラシートのニーズと新しい用途開拓への期待感は高まっている。
無限の可能性をもつ機能性ダンプラシート
ーー創業は昭和50年とのことですが、当初から現在と同様の事業を展開されていたのですか?
もとは物流で使うプラスチックの樹脂製のコンテナを扱う専門商社として創業しました。食品など多業種にコンテナを販売する中で、弊社らしさ、他社との差別化というところで、文化財業界や静電気対策が必要な弱電業界などお客様のニーズに特化したものづくりをするようになっていきました。例えばコンテナにたまる静電気が電子基板を壊してしまうという話を聞いて静電気対策のコンテナを提案しました。文化財であれば、昔は文化財の保管や移動に木箱を使っていましたが、軽量で積み重ねができて、運用のしやすいテンバコを提案しました。そのように文化財保存機器に特化したものがない中で新しい製品を提案することで、現在の文化財事業が確立していったという背景があります。
ーー「繰り返し使え、耐久性に優れたダンプラシート」が今回の応募テーマですが、こちらについて教えてください。
ダンプラシートを扱い始めたのは、お客様のニーズに沿ったコンテナを提案していく中で、コンテナ用の仕切りにダンプラシートを使い始めたのがきっかけでした。そこからその仕切の素材を使って箱自体も作ろうと発展していき、弊社で作るもののバリエーションが増えていったという経緯がありました。
今回ダンプラシートをテーマに選んだ理由は、現在弊社では文化財、工業、森林の3部門で動いているのですが、ダンプラシートは、その3部門全てに絡むコアな素材になっていることから、今回応募テーマとさせていただきました。ダンプラシートの加工自体も弊社の工場でやっていて、いわばコア技術になります。
ーーダンプラシートの一般的な使用方法とはどのようなものがありますか?
一般的には引っ越しの際の養生シート、耐久性や再利用可能ということでダンボールの置き換えで使用されることが多いです。
ーーダンプラシートを素材として考えた時の強みはどんなところにありますか?
ひとつには中空構造ですので軽いこと。それでありながら紙であるとどうしても弱い耐薬品性と耐油性もある程度対応ができるところ、それと加工のしやすさがダンプラシートの強みだと思います。
ーー現状流通しているのは B to Bが中心になりますか?
そうですね。工場さんなどに保管、通い箱として使っていただいています。
ーーそういった意味では本格的な機能を持ったプロユースの道具として、一般ユーザーにアプローチする方法もありそうですね。
ダンプラシート自体はDIYのホームセンターでシートの状態で売られているところもあるようです。
ーー工場など業務用としてだけではなく、ホームユースやDIYの素材としても重宝しそうですね。
そう思います。ただ、ホームセンターさんで売られているダンプラシートは加工のしやすさもあり3mm程度の比較的薄いものがほとんどです。私たちが実際に加工に使用するものは3mmから厚いものですと6mm以上まで実際には幅広いものがあります。それと静電気を防ぐ導電のダンプラシートなどはホームセンターさんでは売られていないこともあり、広く一般的には知られていません。今回のアワードでもデザイナーさんとコラボレーションをして、ダンプラシートのより広い使い方を弊社から提案したいという思いもあります。
ーー導電機能を持った機能性ダンプラシートも手がけられていますが、ダンプラシートに導電性をもたせるための特別な技術があるのですか?
昨今では特別な技術ではないのですが、一般的なダンプラは樹脂を押し出し成形で板の形にするのですが、導電性ダンプラはその樹脂の段階でカーボンを練り込んでいて、そのカーボンで導電性を付与しています。
ーー導電性をもたせる以外にはどのような機能をダンプラシートにもたせることが可能ですか?
防錆機能、難燃仕様など、樹脂の成形や加工技術によりいろんなことが出来ると思います。
開拓者の精神でものづくりをする
ーーものづくりについてお聞きしたいのですが、近隣の企業と連携したものづくりも可能だとお聞きしたのですが、具体的にはどのようなことが可能ですか?
弊社の中ではダンプラシートを箱や仕切りに加工しているのですが、弊社の中だけでは出来ない加工や、他の素材との組み合わせは、協力会社と連携しアッセンブリしていろんなものを作ることが可能だと考えています。
弊社では工場の製造ラインで用いるラインパレットも製造しており、社内では基盤となる板を作り、アルミパーツなどの取り付けは協力会社さんと協同することで最終的な製品を作っています。今回のビジネスデザインアワードでも普段弊社がやっている協力会社さんとの動きを踏襲して、いろんなアイデアを実現していく体制を取りたいと思っています。
ーー吉田さんが個人的に思うダンプラへの熱い思いや、こんな製品作りが可能なのではというアイデアがありましたら教えてください。
ダンプラ自体が加工性が豊かで、切ったり曲げたり接着したりすることが出来るのですが、普段箱や仕切りしか作っていないので、固定観念に囚われていて、ダンプラ自体の良さを限定してしまっているのではないかと危惧しているところがあります。それと弊社で作ったものは用途としては工場で使われるものですので、ものを作っても広く社会一般のお客様には見えないものになってしまっています。ですのでダンプラ自体の可能性と、皆さんに見ていただく機会の二つを潰してしまっているというところで、個人的にはこんなにいいものなのにダンプラ自体の良さを活かせてあげられていないという歯がゆさを感じています。今回の取り組みではそこを打破したいと思っています。
ーー家庭でもヘビーデューティな道具として機能性は申し分ないですし、趣味のカメラなどの電気系のプロダクトの保管箱にも使えそうですね。御社のダンプラは色のラインナップもあって、一般のユーザーが使う楽しみもありそうです。
ありがとうございます。ホームセンターさんなどで一般に流通しているものは、白と黒の2色が中心で、ダンプラシートには実はいろんな色の製品を作ることができます。色展開をすることでより親しみみやすいものを作ることも可能です。
ーー御社の工場の設備にはどのようなものがありますか?
ダンプラを切り出し、熱で加工するといった、ダンプラの加工に関して、ほとんどのことは問題なく出来る設備が整っていますので安心してください。
ーー吉田さんご自身は生活の中でダンプラシートは使用されていますか?
はい。特別にあつらえたものではありませんが、箱に関しては自宅でも荷物の整理に重宝しています。導電のダンプラの箱ですとホコリがつきにくかったり、実際に自分で使ってみると日常でも使えるのではという気付きがあります。先程プロユースという話がありましたが、皆さんの日常のかたわらにあるような製品が作れればいいなと思っています。
ーー最後に御社のものづくりへの向き合い方を教えてください。
お客様の、こういったものが欲しい、今こんなことに困っている、という思いに向き合ったものづくりをしている会社です。いつも世の中の役に立つ仕事をしたいと思っています。
当たり前を疑って新しい境地を開発するということを大切にものづくりをしているのですが、時に固定観念に囚われて開拓者の心を少し遠いところに置いてしまっているという現状も少しあります。ですので同じような意識をもって一緒に新たな境地を開拓してくれるデザイナーさんとともにお仕事をさせていただければ嬉しいです。とにかく柔軟性があって、「出来ない」ということを言わない会社です。自由に発想をしていただければ何か形にする力を持っていますので、なんでも遠慮なくおっしゃってください。
テーマ:繰り返し使え、耐久性に優れた「ダンプラシート」
1975年、合成樹脂総合商社として設立。物流器機、静電気対策用の梱包材をはじめ、文化財保存・展示・普及関連製品、森林保全関連製品の企画、製造、販売を行う。お客様からいただいた様々な課題に応えていくうちに、専門性が蓄積され工業・文化財・森林の3部門が確立された。20代~30代の社員が活躍する活気ある職場。自由に発想し、誰もが開拓者であるという意識を持ちながら日々の業務に当たっている。
インタビューと写真:加藤孝司
2019年度東京ビジネスデザインアワード
デザイン提案募集期間 10月27日(日)まで
応募資格 国内在住のデザイナー、プロデューサー、プランナーなど
応募費用 無料
詳細は公式ウェブサイトをご覧ください