公益財団法人日本デザイン振興会 公益財団法人日本デザイン振興会

JIDAフォーラム/インダストリアルデザインの「プロフェッショナリズム」



日本インダストリアルデザイナー協会 ビジョン委員会主催/JIDAフォーラム

インダストリアルデザインの「プロフェッショナリズム」第3回「精密機器領域」~ほんのちょっとの違いに、深淵を見る      

参加者35名

 

 公益社団法人日本インダストリアルデザイナー協会(JIDA)では、1215年度より、リエゾンセンターにてビジョン委員会主催による「デザイン思考フォーラム」を6回にわたり連続で開催してきました。2018年度より「JIDAフォーラム、シーズン2 」として、インダストリアルデザインの「プロフェッショナリズム」をテーマに、「世代と時代~デザインの神髄はどこに宿る」と題して、20代・40代・60代という3世代のデザイナーに登壇いただき、議論を展開してきました。第1回は自動車業界、第2回は家電領域。そして3回目となる今回は「精密機器領域」を対象に、日本のモノづくりの本質から現代デザインのありようを討議しました。以下に報告します。


連続シリーズ「インダストリアルデザインのプロフェッショナリズム」

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インダストリアルデザイナーという職業が誕生して100年が経とうとしている。この間、デザインの定義は時代の変容とともに大きく変わり、デザイナーの役割も多様なものとなってきた。しかしデザイナーのその根底にあるもの「デザインの神髄」は、なんら変わるものではないのではないか。プロのデザイナーは、日々何を見つめ、何を考え、何と闘っているのか -----。このシリーズは、変わることのないデザイナーの「プロフェッショナリズム」を連続で考察する。


第3回 「精密機器領域」~ほんのちょっとの違いに、深淵を見る

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デザイン思考が、プロのデザイナーを解剖し、その発想と創造のプロセスを形式知化してから10年以上が経過した。本来プロのデザイナーが、体を張って大事にしたいと思ったものは何か。デザイナーの身体のなかに流れる譲りがたいものこそが「プロフェッショナリズム」ではないかとの仮設のもとシーズン2がスタートした。

 今回は、日本が世界に誇る「精密機器領域」。時計やカメラ、医療機器など「精密・精緻」というキーワードにはモノづくりの原点が潜んでいる。この領域、一般には気付かれない「ほんの少しの違い」がデザインの良し悪しに大きく影響する。デザイナーはその紙一重の世界で生き、日々格闘しているのではないだろうか。そのほんのちょっとの違いに隠された秘密から、デザインの深淵に迫りたいと思う。 


「講演者3名+進行役」

50代●石川慶文(いしかわよしふみ)キヤノン株式会社 総合デザインセンター所長

40代●石原悠(いしはらゆう)セイコーインスツル株式会社 ウォッチデザイングループ

30代●鈴木辰彦(すずきたつひこ)オリンパス株式会社 デザインセンター

進行●蘆澤雄亮(あしざわゆうすけ) 芝浦工業大学/元日本デザイン振興会


JIDAフォーラム開催案内
https://www.jida.or.jp/site/information/jidaforum2019


〔フォーラム後記/山田晃三〕

 

 おそらく、戦後60年以上続く日本インダストリアルデザイナー協会(JIDA)だからこそ可能な、テーマと講演者の人選であろうと思う。キャノン、セイコー、オリンパス-----いずれも世界が認めるジャパンブランドであり、JIDAの法人会員である。世界をリードする品質を生みだしている背後にあるものは何か。このミクロともいえるモノづくりの世界を、具体的なプロジェクトの事例を基に、リアルに語っていただいた。

 「カメラと医療機器」、いずれもトップクラスの製品は、プロカメラマンか医師がユーザーである。デザイナーが、ユーザーになれない道具である。コンマゼロ何ミリの世界、人と道具のありようを突き詰めていく。どちらも人間工学では十分でない、使う人の独自の感覚反応を視野に入れている。その詳細が紹介された。絶対に間違えるわけにはいかない、生死をかけたその瞬間に道具が活きる。

 いっぽう「機械式腕時計」。精密機器の極地を披露していただいた。カメラや医療機器とは対局にある嗜好品である。時間が知りたかったらケータイがある。腕時計は正確な時間が知りたくて腕にあるわけではない。「無駄なもの」だからこそひとの人生を救う。そのためには職人の、工芸家の粋でしか品質の保証はできない。ここに道具の性質は違うものの、カメラや医療機器と共通するプロフェッショナリズムが潜んでいた。

 デザインという概念、あるいはデザインという職業は近年、対象を俯瞰してその関係性を秩序化し構築することに視点がいっている。あらゆる産業において、社会全般を視野に、かかえる問題を解決する手法としてデザインが説かれる。モノからコト、サービスやソリューションこそが現代の主要課題かのごとく語られる。間違いではないが、これまで以上にモノ(道具)が現代社会を支えていることに気付き、その背後に命をかけるデザイナーがいることにもっと焦点をあてたい。これができた。

 今回気づいたことは、ミクロを追求する思考が、マクロな視点から全体を認識することと同次元の思考であるということだ。ときにミクロとマクロは逆転すらする。一流の職人(デザイナー)のひと言が、経営トップの決断を左右する。微細な世界での重要な発見が職人の絶対的な言葉となり、ものごとの本質をついた哲学になるからであろう。そう、「一輪の花に宇宙を見る」ことができるのが、デザインの特質ではないだろうか。

 デザインのプロフェッショナリズム、デザインの軸足をしっかり見定めたい。

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