公益財団法人日本デザイン振興会 公益財団法人日本デザイン振興会

テーマ企業インタビュー:株式会社石山

2017年度東京ビジネスデザインアワード

「東京ビジネスデザインアワード」は、東京都内のものづくり中小企業と優れた課題解決力・提案力を併せ持つデザイナーとが協働することを目的とした、企業参加型のデザイン・事業提案コンペティションです。企業の持つ「技術」や「素材」をテーマとして発表、そのテーマに対する企画から販売までの事業全体のデザイン提案を募ります。2017年度は、テーマ8件の発表をおこない、10月25日(水)までデザイン提案を募集中です。

本年度テーマに選ばれた8社へのインタビューをおこない、技術についてや本アワードに期待することなどをお聞きしました。


98%が空気でできているエコ素材としての発泡スチロール

お話:株式会社石山 代表取締役 石山幸夫氏

食品パッケージから建物の断熱材まで、私たちの暮らしを控えめに支える発泡スチロール。墨田区にある株式会社石山は、98%空気でつくる機能性エコ素材として、あらためて注目される発泡スチロールの多彩な成形技術をもつ企業である。技術力をクリエイティブにつなげた新しいもの作りが期待される。


ーー創業は何年になりますか?

大正7年創業で、来年100周年になります。今は作っていませんが、もとは木の樽をつくる会社として創業しました。ですが、60年ほど前にプラスチックが日本に入ってきてからは、安い、丈夫、大量生産ができるということで、私どもの会社でも木製の樽を諦めざるを得ませんでした。それでプラスチックの樽の製造に切り替え、時代の流れで作るものも、販売方法も変えていかなければならないということを学んでいきました。一貫してパッケージというものを作ってきた会社になります。

ーー発泡スチロールを手がけるようになったきっかけを教えてください。

昭和43年から現在の株式会社石山になり、発泡スチロールを作るようになって20年ほどになります。食文化の変化にともない最近はプラスチックの樽自体も目にすることが少なくなりました。醤油も味噌も昔は樽で買っていましたが、今はそんな人はいません。スーパーに並んでいる食品に共通しているのは、パッケージがされているということです。その全てを私どもの会社で作れるようにしようと、そこから現在のようにパッケージの企画から携わる会社となりました。

ーー発泡スチロールという素材の特性を教えてください。

軽量、断熱性、緩衝性は発泡スチロールの三大特性です。今では住宅の断熱材として壁の中など目に見えない部分にもよく使われている製品です。よく使われているのには理由があって、それは先程の特性を最大限発揮しながら、コストパフォーマンスがとても高いことです。

ーーそれ以外にどんな特性がありますか?

ひとつ誤解されている点があるとしたら、環境への影響です。燃やすと有害な煙を排出し環境を破壊するのではと思われていますが、発泡スチロールは98%が空気でできており、ここまで省資源で環境配慮型の素材はプラスチック製品のなかでは他にはありません。燃やしてもただ不完全燃焼するだけで、家庭で処分する際にも普通に資源ごみや燃やせるゴミとして出せることからも分かると思います。二次加工も、スクリーン印刷、OPSラベル貼付け、熱線加工、植毛加工など多様に対応します。

ーー国内では廃棄された発砲スチロールの90.2%がリサイクルされるという点も、環境配慮の部分では見逃せないところだと思います。

発泡スチロールは基本的にB to Bの商品が多いので、回収がしやすいということも影響していると思います。

ーーでもとてもいいことですよね。

そうです。このリサイクル率というのは年々上がっています。これは発泡スチロールの素材を扱う上での誇れる部分だと思います。ですが、私たちは一般の方にも扱っていただける製品も多く出していますので、B to BとB to Cの割合は半々になっています。

ーーおっしゃる通り石山さんの場合、他の発泡スチロールのメーカーと異なるのは、工作のDIY製品など、一般消費者に近い部分でのものづくりもされていることです。

はい。業界内でも特殊だと思います。

ーー発泡スチロールの製造工程を教えてください。

製造方法はとてもシンプルです。基本的にはブタンガスが注入されているポリスチレンという原料に、水蒸気という熱をかけることで、一気に爆発して発泡スチロール(EPS)になります。それを金型の中にいれてやれば、金型通りの形に成形されて製品が仕上がります。

ーー金型があればどんな形のものでも作ることができるのですね。

いい原料といい金型、いい発泡成形機さえあればどんな形でも作ることができます。原料に使うポリスチレンによって固さも自由に変化させることができます。そのため強度や緩衝性、断熱性自体も変化させることができるフレキシブルな素材です。それと、金型を使って作る立体物とは異なりますが、私どもが独自に作った連続押出機を使えば板物を無限に作ることができます。それは今までのEPSの発泡スチロール屋にはない発想で作られたマシンであり製品です。

ーーB to Cとしては、これまでどのような商品を手がけてきましたか?

誰でも比較的自由に加工ができるという意味でDIYの素材として多く使われています。私どもの商品で発泡スチロールのレンガがあるのですが、こちらは年間60万個の売上を記録しました。私がまだ営業の駆け出しだった20年前に始めて製造した際には、私どもの会社は食品のパッケージ屋でしたから、こんなもの売れるはずがないと思っていました(笑)。ですがその後それが爆発的に売れてヒット商品になりました。サイズを変えたり、板物を作ったり、インテリア壁などバリエーションを展開して大成功しました。ユーザーがSNSで製品を拡散してくださったり、時代性も大きかったと思います。クーラーボックスも非常に売れる商品になりました。

ーーこれまでの発泡スチロールメーカーがやられなかったような、企画力が素晴らしいですね。

それが出来たのも、私どもが発泡スチロール屋になる前から、パッケージ屋であると同時に企画屋であったこと、時代の変化に柔軟に対応して、色を変えることができる気運があったからだと思っています。どのプラスチックメーカーでもそうなのですが、同じものを大量に作るほうが楽なんです。うちのひとつの特徴は、同じ発泡スチロールでも13色のものを作ることができることです。それができるのは工場自体を、原料をすぐに入れ替えることができる、金型を変えることができるなど、小ロットに対応できる設備にしているからです。それが出来るのも私どもの会社の強みです。

ーー「代々初代」という株式会社石山としての創業者の思いがありますが、石山さんのものづくりへの思いを教えてください。

私は2代目、正確には4代目になります。代々その時代に合わせた経営方針を掲げてきましたが、すべてに共通するのは、「時代を担う食住文化をより豊かにすべく器を提供する」という理念です。食品のパッケージからスタートし、今は建材も手がけていますが、わたしたちはそれも私どもの商品の総称として「器」と呼んでいます。住む環境、食文化がより豊かになるよう、時代時代に合わせて新しい商品、ビジネスモデルを作るのが私どものミッションです。

ーーものを作るということは、世の中に新しい価値を提供することだと思うのですが、ものづくりの楽しさはどのようなところにあるとお考えですか?

基本的には世の中の人に必要とされ、求められ、売れる商品を作ることだと考えています。顧客満足度に関してもそれが一番の指標になると思います。売れる商品イコール、世の中で役立っているということです。B to Cの商品を手がけることでつくづく感じるのは、SNSを通じてさまざまな反応をみられることです。お客様が楽しんでいる姿を直接感じることが、私どもの喜びに繋がっています。

ーー今回のアワードではどのようなことを期待されますか?

新しいものを企画してきた会社と自負していますが、まだまだ自分たちの殻から抜け切られていないことも痛感しています。次の一手が打ち出せていません。まったく異なる角度からのアイデア、デザインを提案いただき、ぜひ一緒に作り上げていきたいと思っています。それと私どもの成形技術をさらに磨きたいという思いも強くあります。同じことをやっていても、工場側の技術の向上がありません。工場側の人間もチャレンジングなアイデアに対して応えたいという思いがとても強く、その部分の予算もつけて欲しいという要望もすでにもらっています。

ーーどのようなデザイナーと協働したいですか?

企画側も製造側も考えが凝り固まった部分がありますので、ここをどうやっても打破したいという思いがあります。ぜひ無茶振りをしてください(笑)。

株式会社石山 代表取締役 石山幸夫氏

株式会社石山(墨田区)http://ishiyamapack.co.jp

98%の空気でつくる機能性エコ素材「発泡スチロール成形技術」

大正7年に木製樽の製造販売から創業。時代の変革に応じてさまざまな新規事業を発展してきた。長年培ってきた食品パッケージング技術が現在の発泡スチロール製品製造につながっている。現在では従来の食品物流容器だけではなく、医薬品物流の為の保冷容器、HC業界シェアNO.1のDIY製品、建築資材、産業資材用発泡スチロールなど総合発泡スチロールメーカーとして、様々な業界、製品展開と技術開発を行っている。

インタビューと写真:加藤孝司


2017年度東京ビジネスデザインアワード
募集期間 10月25日(水)まで
応募資格 国内在住のデザイナー、プロデューサー、プランナーなど
応募費用 無料
詳細は公式ウェブサイトをご覧ください

https://www.tokyo-design.ne.jp/award.html

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