公益財団法人日本デザイン振興会 公益財団法人日本デザイン振興会

テーマ企業インタビュー:株式会社海光社

2017年度東京ビジネスデザインアワード

「東京ビジネスデザインアワード」は、東京都内のものづくり中小企業と優れた課題解決力・提案力を併せ持つデザイナーとが協働することを目的とした、企業参加型のデザイン・事業提案コンペティションです。
企業の持つ「技術」や「素材」をテーマとして発表、そのテーマに対する企画から販売までの事業全体のデザイン提案を募ります。2017年度は、テーマ8件の発表をおこない、10月25日(水)までデザイン提案を募集中です。

本年度テーマに選ばれた8社へのインタビューをおこない、技術についてや本アワードに期待することなどをお聞きしました。


新しい技術とアイデアで手がけた「無機ELランプ」

お話:株式会社海光社 代表取締役 林宏至氏


消防向け救護ロープから発展したワイヤー状の発光ロープ「ELコード」や「ELファイバー」、フィルム状の「ELシート」などの無機ELランプを開発し、イルミネーションやディスプレイなどの分野で注目される株式会社海光社。長年、漁具製品の開発で培ってきた技術は、今あらたな分野に活躍の幅を広げている。そのものづくりへの思いをうかがった。


ーー創業年を教えてください。

私どもの会社は1946年に創業しました。創業者である祖父は漁具や漁法の研究者でした。水中集魚灯などその分野ではさまざまな特許をもっていました。その後私の父が入社してからは、祖父が持つ特許を使い何か作れないかと考え、鉛入りの沈むロープを考案し、製造を始めたのがメーカーとしてのスタートになります。ニッチマーケットではありますが、いつの時代にもニーズはある業界だと思います。

ーー無機EL技術の開発の経緯について教えてください。

もともと特殊ロープを作っていて、その一部で消防向けのロープを作っていたのですが、夜間や暗い場所用に光らせることができないかとご相談をいただきました。そこで光源を検討した結果、無機ELが曲げられる素材でしたので、発光ロープであるELコードの開発をした経緯があります。

ーー2000年以降に無機EL技術を使ったさまざまな製品を手がけられていますが、これまでどのような製品を手がけてこられましたか?

消防向けの他には、看板、棚板照明、光壁など、店舗装飾、ディスプレイなどを中心に開発してきました。他の光源ではかたちにしにくいものを、新しい技術とアイデアで手がけてきました。特にELコードはネオン管の変わりに使われることが増えてきました。ネオン管の場合、職人さんの技術が必要になりますが、ELコードでしたら誰でも曲げられ、扱いやすいという利点があります。

ーー流麗な筆記体のような文字も可能ですね。

はい。工夫すれば作ることができます。

ーーその意味でこの商品のメリットを挙げるとしたらどのようなことがありますか?

まずひとつは、軽いという利点があげられます。今までのものですと重量物になりますので、壁に取り付ける場合にもある程度強度が必要でした。ですが、ELコードであれば、既存の壁に簡単に貼り付けることができます。あとは薄さです。これまでの利用例ではこの無機ELしか入らないような場所での使用も可能になりました。

ーー無機ELシート、無機ELファイバーは同じ技術を用い作られたものですか?

はい。蛍光体はまったく同じものを用いています。

ーーどのような原理で発光させているのか教えてください。

粉状の蛍光体に電流をかけることで、蛍光体が光を発します。その蛍光体自体を面や線に塗布することが可能で、均一なむらのない面や線の光を出すことができます。

 ーー御社の技術の素晴らしいところは、線でも面でも、その均質な光を発することが出来ることだと思うのですが、その点についてもう少し詳しく教えてください。

たとえばLEDでも面光源がありますが、どうしても複数の光源になりますので色や明るさのバラつきがでてしまい、均一な灯りを出すことは難しいのです。無機ELであれば比較的簡単に均質な灯りを作り出すことが可能です。

ーーELコードやELシートに関してはどのくらいの長さや大きさのものを作ることが可能ですか?

コードは20m。シートはA2サイズ、長手方向は900mmまで作ることができます。規格サイズですとA2が最大になりますが、少しずつ繋ぎ合わせで大面積をつくることが可能で、少し重ねることで光の途切れ目をなくして、理論上どのような大きさでも表現が可能になります。

ーーファッションショーやアパレルショップの内装に使われるなど、もともと消防用資材として開発されたものが幅広い分野で使われていることに、戸惑いや驚きはありましたか?

当社のHPに載せたところ、ファッションやインテリア関連など、まったく違う業界のたくさんのデザイナーからお問い合わせをいただきました。まさかわれわれがおしゃれなメーカーとお仕事をするようになるとは思いませんでした(笑)。この製品を作ることでたくさんの方にお会いするようになり、非常に喜んでいます。

ーーまちの中で目にする看板やサインで海光社さんの技術を目の当たりにしている訳ですね。

有名なショップでも使っていただき、私たちのやりがいにもつながっています。

ーーものづくりへの思いを聞かせてください。

漁業資材はかつての花形産業でしたが、今はニッチマーケットになっています。小さな規模でやっていますので、ボリュームゾーンを狙うより、少数精鋭で他社がやらない仕事をやっていきたいと思っています。

ーーみなさん楽しんでものづくりをされていますが、ものづくりのおもしろみとはどのようなことですか?

他ではやっていないことをやっている会社ですので、製品を持って伺うと、どんな企業でもお話を聞いてくださるというところがひとつあります。著名な建築家やデザイナーともお会いする機会があり、非常に貴重な経験をさせていただいています。

ーーこれまで意外性のある、印象的な使われ方というのはどのようなものがありましたか?

時々、これは!というような新しいアイデアに出会うことがあります。以前学生から「光る藁人形」のアイデアがありました。これは実現はしなかったのですが、フィギュアのメーカーからぜひ取り扱いたいとおっしゃっていただいたこともありました。

ーー生産工場はどちらにありますか?

千葉県にあります。無機ELの製品の加工に関しては、まだロットも少ないこともあり、一部の加工は本社でもやっています。本社がある日本橋浜町は秋葉原も近いので、ちょっとした部品でも在庫を持たずにすぐに対応できるという利点があります。

ーー開発に関して、東京の本社で技術者の方に対応していただける環境があるのは、新しいものづくりをする上での強みになりますね。

特注のお仕事をいただくことも多く、本社のラボで対応させていただくこともよくあります。細かなことにもすぐに対応が出来ると思います。

ーー本アワードに応募したきっかけを教えてください。

デザイナーと協働で、当社で作ったものをB to Cでお客様に使っていただけるようなものを開発したいという思いがありました。社内ではなかなかアイデアが生まれにくく、学生とのプロジェクトでもいいアイデアがでるのですが、試作止まりになってしまいます。ここから先はプロのデザイナーと一緒に仕事をしない限り前に進めない、という思いから今回応募した経緯があります。

ーーどんなデザイナーと仕事をしてみたいですか?

これまで産業用の資材で商売してきましたので、自社で最終製品まで開発をして製造するということが得意ではありません。今回はパンフレット、ウェブでの展開などプロモーションまで含めて、販売するところまでご提案いただけるデザイナーとご一緒させていただければ嬉しいです。

無機ELは古くからある技術ですが、なかなか応用が進んでいない技術ですので、まだまだできることはたくさんあると思います。本社での加工ができますので、打ち合わせをしながら、すぐ試作もできます。ぜひよいアイデアをお待ちしています。

株式会社海光社 代表取締役 林宏至氏

株式会社海光社(中央区)https://kaikosha.co.jp

救難ロープから発展した、フイルム・ワイヤー状の「無機ELランプ」

海光社は1946年に創業し、世界で初めて線状のオモリを漁業に応用した高比重漁網・綱のメーカーである。漁業分野以外ではカラスや風などによるゴミの拡散を防ぐカラスよけネットや、カーテンの裾に縫い込みドレープをきれいに出すためのオモリの生産を行なっている。消防向けの救難ロープを生産していたところから発光ロープの要望があり、消防庁や防衛庁向けに電線状の無機EL発光ロープの生産を開始した。


インタビューと写真:加藤孝司


2017年度東京ビジネスデザインアワード

募集期間 10月25日(水)まで
応募資格 国内在住のデザイナー、プロデューサー、プランナーなど
応募費用 無料
詳細は 公式ウェブサイトをご覧ください


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