公益財団法人日本デザイン振興会 公益財団法人日本デザイン振興会

開催レポート:トークセッション「DMM.make AKIBA✕GOOD DESIGN AWARD ~今、『デザイン』にできること~」

1月25日(水)DMM.make AKIBAにて、グッドデザイン賞審査委員によるトークセッション「DMM.make AKIBA✕GOOD DESIGN AWARD ~今、『デザイン』にできること~」を開催いたしました。以下、内容をレポートいたします。

[トークセッション] DMM.make AKIBA✕GOOD DESIGN AWARD  
~今、『デザイン』にできること~

日 時: 2017年1月25日(水)19:00-21:00
場 所: DMM.make AKIBA
登壇者: 根津 孝太氏(クリエイティブコミュニケーター |znug design,inc. CEO)、林 信行氏(ジャーナリスト/コンサルタント)、青木 俊介氏(ロボットクリエイター |ユカイ工学株式会社 代表)

時代に合わせて変化する「デザイン」

肩書きとしては「デザイナー」と名乗っていない御三方が、グッドデザイン賞の審査委員であるというのは、近年のグッドデザイン賞を象徴していると感じますが、そのあたりはいかがでしょうか。


根津:

審査委員にも様々なジャンルの方がいます。いわゆるデザイナーの方はもちろんですが、経営者の方や編集者の方などもいらっしゃいます。それは、審査する対象も多岐に渡り、審査基準も時代に合わせて変わってきているからです。2016年度グッドデザイン大賞に選出された「オーサグラフ世界地図」は、印象的でした。これは「地図の図法」が受賞していて、この図法を利用した地図は、世界の中心が存在しない世界地図なんです。


林:

そもそも大賞候補は6つの候補があったのですが、そのどれもが全くジャンルの異なるものでしたね。
ヤンマーのYT3シリーズというトラクターは、実際に受賞展でも展示されていましたが、とてもよかったです。それから「東京防災」ですね。これは、書籍としてデザインの完成度だけでなく、その配布方法なども含め、防災に対する行政の真摯な態度が伝わってきました。



青木:

そうですね。受賞者の方のプレゼンでもおっしゃっていましたが、お役所から茶色い封筒に入ってこの本が家庭に送られてきたとしたら、中身も見ないで捨てられることのほうが多いだろうと。まずはそこの壁を越えようというところから始まっていますよね。


根津:

防災の情報はとても大切なものなのに、それが届かないままに捨てられてしまうということに問題意識をもって取り組んだという点を、グッドデザイン賞として評価させていただいたわけです。そういった点では、もしかすると皆さんが想像するデザイン賞とは、評価のあり方が少し違うかもしれないですね。


「より良いもの」を選ぶための視点や考え方の多様化


根津:

個人的な意見として言うならば、グッドデザイン賞はいま変革期にあるのかなと思います。そもそもは、昔の通産省によって、悪質な製品を抑制し、良い製品にマークを付けて奨励しようという政策から始まっているわけですが、時代が進んでいき、悪い製品がそれほど見られなくなったため、「より良いもの」を選んでいこうという傾向に変わってきたのかなと思います。そして、「より良いもの」を選ぶための視点や考え方が多様になってきたのだと感じます。

グッドデザイン賞の審査は、皆さんが思っている以上に体力勝負です。一次審査は書類ベースで審査が行われますが、かなりの数の対象が一次審査を通過します。そして、二次審査ではビッグサイトに全ての審査対象が並べられて一点一点実際に精査していきます。林さんのユニットなんてかなりの数がありましたよね。


林:

僕の担当は情報機器の審査ユニットでしたが、その審査対象は、PCやスマホ、オーディオ機器、カメラなど多岐にわたります。ある人がおっしゃっていたのですが、デザイナーや作り手側にはいろいろな想いがあるけれど、社内ではなかなかそういったことを褒めてくれることがないんだそうです。グッドデザイン賞は、そういった作り手の素敵な想いを応援していく活動なんじゃないかと聞いて、確かにその通りだと気づかされました。


根津:

林さんがおっしゃることは、ここDMM.makeのシナジーにもなっていくのかなって思います。僕が担当していたモビリティの審査ユニットには、COGYやモルグといった車椅子があるのですが、これらの製品を作っている会社は、大手企業と比べれば、小さな企業なんですね。でも、良いものをつくりたいという想いをこめて製品を世に出すのは、みんな同じなんです。そういう作り手の想いや熱意もきちんと評価していきたいと思って真剣に見ています。会社の大きさにかかわらず、「良いものは良い」という気持ちで審査しているので、スタートアップの皆さんや、中小企業の皆さんにも応募していただけるといいですね。


青木:

大賞を受賞したオーサグラフ世界地図の受賞者さんは、10年以上ずっと個人で取り組んでいらっしゃった、というその思い入れが伝わってきました。そういった、個人が思い入れを持って新しいものを作っているというストーリーは、とても共感を感じますし、これからのデザインにも求められているのかなと。そういった意味で、今まで光の当たらなかった場所に、気づきを与えられているのかなとは思いますね。


根津:

そうですね、ベスト100ともなると全て良いものばかりなので、審査会のときに、審査委員が応募者の方になりかわって熱のこもった応援演説をしたりするのですが、それを聞くだけで心が動いてしまって審査がさらに難しくなるということもありました。


林:

応募者の方が記入してくる審査情報の書類にも情熱を感じることがあります。一方で、製品のスペックだけを書いている書類は、そこにどのような想いで取り組んでいるのかが読み取れないので、評価が難しい。あとは、対話型審査にお越しいただくことも、そうした想いを理解することのできる良い機会になっています。


根津:

どういうところに着目して審査を行っていくのか、そういったことも含めて、審査そのものも「デザイン」していく必要がありますね。我々も審査がどうあるべきなのか常に考え、議論を重ねながら取り組んでいるということも知っていただければと思います。




トークセッションの後には、DMM.make AKIBAの施設見学会も実施。参加者の皆さんは、充実した設備やサポート体制などを目の当たりにして、ぜひ利用してみたい!と思われた方も多くいらっしゃったようでした。
グッドデザイン賞では、今後もDMM.make AKIBAのようなものづくりを支援する取り組みを行う企業や団体とコラボし、皆さまのものづくりを応援していきたいと考えています。今後のコラボ企画にもご注目ください!

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