テーマ企業インタビュー05:細田木材工業株式会社
2016年度東京ビジネスデザインアワード
「東京ビジネスデザインアワード」は、東京都内のものづくり中小企業と優れた課題解決力・提案力を併せ持つデザイナーとが協働することを目的とした、企業参加型のデザイン・事業提案コンペティションです。
企業の持つ「技術」や「素材」をテーマとして発表、そのテーマに対する企画から販売までの事業全体のデザイン提案を募ります。2016年度は、テーマ11件の発表をおこない、11月4日(金)までデザイン提案を募集中です。
本年度テーマに選ばれた11社へのインタビューをおこない、技術についてや本アワードに期待することなどをお聞きしました。
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地場で活躍する東京発の木材加工会社
細田木材工業株式会社
お話=生産本部取締役統括部長 勅使河原敦氏、取締役生産部部長 小川晃氏
古くから木材加工の街として栄える新木場にある、木材の製造、加工、塗装、屋内外施工まで一貫して対応できる都内でも数少ない木材加工会社。昭和6年創業という長い歴史を持ち、木材の付加価値をつくることをテーマに自社製品の開発にもチャレンジする。地元東京の多摩産杉を使った地産地消で、地の利を活かしたものづくりと、「東京の杉」というブランディングづくりへの取り組みも注目される。
ーーどのようなお仕事をされていますか?
木材をただ売るだけではなく、そこに付加価値を付けて販売しています。具体的には木材の仕入れから加工、塗装、施工まで自社で一貫して行い、デザイン提案までできることが強みです。またお客様が持ち込まれた木材をオーダーに合わせて委託加工する業務も行っています。近年ではフローリングやウッドデッキなどの自社による木材製品の開発も行っています。
ーー昭和6年創業だそうですが、長年この地で木材加工を行ってきたのですか?
はい。ただ時代とともに木材との関わり方も変化してきました。創業は新木場の前身でもある江東区木場で北洋材の製材から始まりました。その後、木材の人工乾燥、加工へとシフトしていきつつ、現代の多品種少量のニーズにも対応できるような今日の体制になりました。
いまは委託による木材加工が主ですが、それだけでは生産の多いときと少ないときで波ができてしまいます。工場を稼働させていく上で、常に安定した生産を続けていくためにも、現在自社製品を製造し販売することにも力を入れています。そのひとつの取り組みとして、東京の多摩産の杉を活用したものづくりを進めています。
ーー得意とする技術、独自の技術を教えてください。
NCルーターという木工機械をつかった精巧な2D加工です。塗装も得意としており、特に6年ほど前からガラス塗料という木材の内部に浸透する塗料を取り入れています。これはガラス塗装を施すことで汚れにくく、傷が目立ちにくく、メンテナンスが容易というメリットがあります。3年前にオープンしたギャラリーのフローリングの床にもこの塗装が採用されています。おそらく大手は別として、当社の規模で木材の加工から塗装まで一貫してできる企業は都内では珍しいと思います。
ーー多摩産杉を積極的に扱うようになった背景を教えてください。
さまざまな環境問題と、国の政策により国産木材の使用が推奨されたこと、2020年東京オリンピック・パラリンピックの開催が決まったことをきっかけに、当社でも「地産地消」を推進していこうというのが大きな理由です。地産地消によって運送が最小限となることで環境面への配慮に、また森に植えられた杉を木材として積極的に活用することで、現在問題視されている杉花粉対策となる、花粉の少ない木に植え替える取り組みを応援する意味でも、森の保全にも繋がります。
ーー多摩産杉を使った製品にはどのようなものがありますか?
オリジナル製品として木製タイルシステム「スクエアウッズ多摩」を開発しました。これは正方形や長方形を基本形とするタイル状に加工した杉材を、壁に設置した下地材に専用の留め具を取り付け、そこにはめ込むことで、美しい木目を活かした壁などが簡単に施工できる製品です。杉材は湿度により反ることもありますが、長年の製材加工で培ってきた精密技術により木材の自然な変化を考慮してタイルを加工しています。一つひとつ異なる木目を活かしたモザイク状や異なる大きさでの配置、着色による多色展開、レーザー加工機による印字や柄のデザインもでき、すでに10例ほどの施工実績があります。
ーースクエアウッズのメリットはどのようなところにあるとお考えですか?
スクエアウッズであればコスト面でも優しく、シンプルな構造なので施工やメンテナンスも容易で、杉の香りで心地よい空間を作ることできます。たとえばエントランスやロビーなどの無機質な白い壁に簡単に木のぬくもりが生まれます。加えて間伐材や使用が難しかった材料を活用するメリットは環境的にも大きいと考えています。
これらの新しい取り組みを始めたことで取引先にも変化があらわれ、木材屋、材木屋さんがお客様の中心だったところから、インテリアデザイナーや建築家などさまざまな方に注目していただくようになり、新たな可能性を手応えとして感じているところです。
ーーどのような機械を使っていますか?
切削機械はフローリング材などの断面形状の加工を行う7軸モルダー、機械の加工動作を数値にプログラム化して加工を行う2軸NCルーターは、プレカットやR切り抜き加工、穴あけ加工などができる非常に精度の高い加工機です。他には木の厚みや表面仕上げを行うワイドベルトサンダー、Wエンドテノーナ、4面カンナ盤があります。
ーー東京ビジネスデザインアワードではどのようなことをしてみたいですか?
近年私どもの業界では食育と同じような意味で「木育」という言葉が盛んに言われるようになりました。これは、暮らしの中に木製品を取り入れることで自然を知ってもらおうという考え方で、子どもの頃から木に親しんでもらい、大人になっても木がそばにある生活を当たり前に思ってもらえるようになればという願いが込められています。当社でも長年培ってきた技術と多摩産の木材によって、この木育に何か役立ちたいと思っています。例えば知育玩具や生活雑貨など、これから未来を築く小さなお子さんたちにも知ってもらえるような、彼らの教育に繋がるようなものづくりを実現してみたいです。
他にも建築分野以外で何か木材を活用できるアイデアも求めています。これまでも家具などの製造についてご相談を受けることが多かったのですが、いま持っている設備に手を加えてできることがあれば、時間はかかるかもしれませんが今回をきっかけに対応していきたいと思っています。デザイナーの皆さんが考えていることをいかに形にすることができるか、そこに向き合いながらものづくりをしていきたいと思っています。
当社には木材を通して社会の役に立つという信条があります。どのようにすれば社会の役に立てるのか、その基本を大切に一緒にものづくりをしていただけるパートナーとの出会いを期待しています。
細田木材工業株式会社(江東区) http://www.woody-art-hosoda.co.jp
木材を熟知したプロフェッショナルとして、製造、加工、施工、設計と一貫した技術力を持つ。多摩産材を使用した木製タイルシステム「スクエアウッズ」の開発を行い、木材の不燃化等の高機能化木材にも取り組んでいる。
写真とテキスト:加藤孝司 Takashi Kato
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2016年度東京ビジネスデザインアワード
募集期間 11月4日(金)まで
応募資格 国内在住のデザイナー、プロデューサー、プランナーなど
応募費用 無料
詳細は公式ウェブサイトをご覧ください
http://www.tokyo-design.ne.jp/award.html