公益財団法人日本デザイン振興会 公益財団法人日本デザイン振興会

テーマ企業インタビュー10:プロモツール株式会社

2016年度東京ビジネスデザインアワード

「東京ビジネスデザインアワード」は、東京都内のものづくり中小企業と優れた課題解決力・提案力を併せ持つデザイナーとが協働することを目的とした、企業参加型のデザイン・事業提案コンペティションです。
企業の持つ「技術」や「素材」をテーマとして発表、そのテーマに対する企画から販売までの事業全体のデザイン提案を募ります。2016年度は、テーマ11件の発表をおこない、11月4日(金)までデザイン提案を募集中です。

本年度テーマに選ばれた11社へのインタビューをおこない、技術についてや本アワードに期待することなどをお聞きしました。

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オリジナルの香りを使って「ウェアラブル放香器」の開発を目指す
プロモツール株式会社
お話=代表取締役社長 井上賢一氏

プロモツールは、1999年に設立されたプロモーションツールの制作を手がける会社。2005年に香りビジネスに参入し、香りで販促、空間デザイン、ブランディングなどを展開している。東京ビジネスデザインアワードで目指すのは、映画館やさまざまな劇場で使用可能な「ウェアラブル放香器」の開発。同社のさまざまな香りを作り出す技術を、販促に、空間演出に、そしてブランディングに応用する「“新”香りビジネス」への思いについて話をうかがった。

ーー創業のきっかけを教えてください。
何度か転職を経験して、最後の勤務先であった化粧品メーカーでパリに駐在していました。その時に知り合ったアメリカの化粧品サンプルメーカーの社長に口説かれ、帰国後に、その会社の日本総代理店としてスタートしました。当初は香りとは全く別モノの化粧品サンプルの受託製造を行っており、社名も「カラープレリュード・アジア」でした。

ーー香りビジネスを始めたのはいつ頃になりますか?
化粧品サンプルメーカーの総代理店として独立してから5年ほど経ち、化粧品サンプルだけでなく、その他の販促ツールも取り扱う会社として社名も「プロモツール」に変えた頃でした。
その年の秋に日本で上映されることになった映画「チャーリーとチョコレート工場」のプロモーションの相談を受けたことが香り事業に参入したきっかけです。まだ誰も映画を観ていないタイミングでしたが、タイトルからチョコレート工場に関する映画だろうと考え、上映中に映画館内でチョコレートの香りを流し、日本初の“ニオイの出る映画”として宣伝したら当たるのでは?と提案したところ、配給元に二つ返事で採用され、新聞やメディアで大きく取り上げられました。以後さまざまな香りを作って欲しいとの依頼が舞い込むようになりました。

ーーそこからさまざまな香りをつくることに取り組まれたのですね。
もともと化粧品サンプルの受託製造を請け負う会社でしたので、香りに関して親近感はありましたが、当時は香りを作るノウハウを持っていたわけではありませんでした。最初はアメリカの香りメーカーから輸入した香料と放香器を使って事業を行っていましたが、日本とアメリカの香りに対する考え方や好みに大きなギャップがあることに気付きました。日本人が天然香料を好むのに対して、アメリカ人は合成香料の方が安全だと考えられていました。代理店ビジネスではいずれ限界がくると考え、自社で香りを作り始めたことが今日に繋がっています。

ーー御社の得意とする技術や強みを教えてください。
自分たちで一から香りを作るとなると、その道のプロ、すなわち優れた感覚をもった調香師の存在が不可欠です。しかも当社の調香師は、客先の希望に応えて様々な香りを作り出せる素質と感性が必要です。単に香りを作るだけでなく、ワインのソムリエのように香りについて語れなくてはいけません。
ですが、日本には調香師の絶対数が少なく、調香師を養成する学校も皆無に近い状態です。そのため、調香師の採用には大変苦労しました。そんな中で、香料会社ではない当社のような“新”香りビジネスを営む会社が調香師を抱えているのは強みです。

ーーお客様のオーダーに関して香りをどのように作っていくのですか?
お客様の求める香りを作る際は、まず作りたい香りのイメージのキーワードを語っていただき、それを基に調香師がお客様の作りたいと思っている香りを具現化していきます。調香師には、頭の中にインプットされている数千種類にも及ぶ単品香料の何と何を掛け合わせるとどのような香りができる、という香料の掛け合わせの方程式をイメージする非常に高度な能力が求められます。
当社には、心地よい香りから動物の糞の臭いのような悪臭の製作まで、ありとあらゆる香り(ニオイ)の製作依頼が来ますが、そのほとんどすべてに対応しています。

ーー香りはどのようなものの配合でできているのですか?
香り(ニオイ)は化学物質の複合体です。例えば、薔薇の花のエッセンシャルオイルを分析するといろいろな化学物質に分解することができます。

ーー現在は香りを使ってどのようなビジネスをされていますか?
いくつかあります。まず、当社の香りビジネスの出発点でもある香りを用いた販売促進です。次に、香りで空間デザイン、そして香りを用いたブランディングや、映画やテーマパーク、ゲーム等の臨場感を高めるために使うエンターティメント使用です。他にも、香りの効果・効能を利用したものもあります。

ーー香りでどのように世の中に貢献していきたいとお考えですか?
起業した際に、一番考えたことは、どうしたら資本力のある大企業に潰されないで済むか?と言うことでした。それは、大企業が魅力に感じないニッチな事業に徹すること、大企業と言えども手を出せない特許技術を持つことでした。そのような考えのもと、今年で創業17年になりますが、何とか潰されずに生き残っております。当社は、“Niche, but Big Impact” を会社のスローガンにしており、他社のコピーではない、独自の製品づくりを行っています。今後も、独自の独創的な技術で世の中に貢献し、スーパーニッチな企業を目指していきたいです。

ーー狭い市場であっても、他にはない「オリジナル」のブランド力を磨いていくということを強みにされているのですね。
その通りです。たとえばフランスの“エルメス”のようなファミリー企業のブランド力が、未だに衰えてないのは、ニッチでオリジナリティーの有るものを大切にしてきたからではないでしょうか。他社の真似をしていたら、今日まで生き残っていなかったと思うんです。

ーー東京ビジネスデザインアワードにどのようなことを期待していますか?
当社が製品特許を取得し、製品化を進めている「ウェアラブル放香器」の、通信技術を含めた理想的なデザインをご提案頂ければと考えています。私どもは香りを作ることに関してはプロですが、機械やデバイスを構成するパーツ等、ハード面の製作では全くの素人ですので、単純に箱モノのデザインを提案して頂くのではなく、プロのデザイナーから、エンジニアリング的なソリューションを含めた提案を期待しています。
「ウェアラブル放香器」は、人々にまったく新しい体験をもたらすツールだと思いますので、それを一緒に考えていただけるデザイナーの皆さんとの出会いのきっかけになれば嬉しいです。

プロモツール株式会社(文京区) http://www.promotool.jp
ニッチで独創的な事業にこだわり、各種販促ツールの企画・製造をおこなう。香りを流し購買を誘う「香りで販促」、企業や商業施設、文化施設のブランディングに香りを用いる「香りで空間デザイン」の導入を提案。放香器の製造・販売も手がける。

写真とテキスト:加藤孝司 Takashi Kato

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2016年度東京ビジネスデザインアワード
募集期間 11月4日(金)まで
応募資格 国内在住のデザイナー、プロデューサー、プランナーなど
応募費用 無料
詳細は公式ウェブサイトをご覧ください
http://www.tokyo-design.ne.jp/award.html

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