テーマ企業インタビュー01:株式会社コスモテック
2016年度東京ビジネスデザインアワード
「東京ビジネスデザインアワード」は、東京都内のものづくり中小企業と優れた課題解決力・提案力を併せ持つデザイナーとが協働することを目的とした、企業参加型のデザイン・事業提案コンペティションです。
企業の持つ「技術」や「素材」をテーマとして発表、そのテーマに対する企画から販売までの事業全体のデザイン提案を募ります。2016年度は、テーマ11件の発表をおこない、11月4日(金)までデザイン提案を募集中です。
本年度テーマに選ばれた11社へのインタビューをおこない、技術についてや本アワードに期待することなどをお聞きしました。
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お客様に満足していただけるものを作ることが私たちの仕事です。
株式会社コスモテック
お話=代表取締役 高見澤友伸氏
パソコンのバックライト用反射シートやスマートフォンの保護シールなど、特殊フィルムの製作を得意とするコスモテック。なかでも同社が開発した独自の高分子技術を駆使した機能性シール「肌用転写シール」は、水を使わずに貼ることができ、自由に伸縮し、剥がれにくく、かつ簡単にはがせる。その特長を活かしたさまざまな製品も開発され、私たちが目にする機会も増えている。顧客のニーズを満足させる製品をうみだすコスモテックのものづくり精神とは。
ーー創業は何年になりますか?
1989年11月に私の父が創業した会社です。父は大学で高分子ポリマーを専攻し、卒業後、某テープメーカーの研究所に勤務したのち、いろいろなご縁がありコスモテックを創業しました。私自身は二代目になりますが一貫して粘着テープ関連の仕事に携わってきました。
ーーどういったお仕事をされていますか?
大きくいえば機能性フィルムの開発、生産、販売になります。機能性フィルムといって一番分かりやすいものとして、粘着テープがあります。粘着テープのほかには、例えばパソコンなどに使われる高反射率を有する特殊な反射シートといったものなどもあります。それらを総称して機能性フィルムといいます。
ーー得意とする技術を教えてください。
フィルムなどに対して特殊な表面処理を行うのが当社の技術になります。業界的には多岐にわたっており、スマートフォン、パソコンの液晶やタッチパネルに使われるフィルムを主とし、タトゥーシールなどの肌用転写シール、半導体向けの特殊なフィルムの製造も行っています。
ーー一言で機能性フィルムといってもさまざまなものがあるのですね。独自の技術を教えてください。
機能性フィルム開発に携わる大手企業ができることであれば、ほとんどのことが当社でも可能です。では、われわれの会社の価値はどこにあるのかといえば、小規模であっても、最新の技術と設備でお客様のニーズに対応できることだと思っています。機能性フィルムは決して目立つものではありませんが、今日では身の回りのあらゆるところに使われているといっても過言ではありません。機能性フィルムを必要とされるお客様にあった提案をするのが私どもの会社になります。
ーー身近なところでの小さなニーズや、小ロットへの対応など、大手企業ではできないようなところにも細やかに対応していただけるのは嬉しいですし、企業としての強みになりますね。
ありがとうございます。工業用テープの話になりますが、当社のお客様からは、大手企業は営業にくる機会が少ないという声を耳にします。つまり、機能性フィルムが必要な場合は、カタログの中から選び、お客様自身が知識を身につけそれを使いこなすことが求められているわけです。ですがわれわれは、例え小さなニーズであっても、お客様の声に耳を傾け、本当に必要なものを一緒に考えて開発していくことができる会社です。そこが当社の最大の価値だと思っています。
ーーそのような小さなニーズから新しく生まれた製品の例もあるのですか?
スマートフォンの画面に貼る保護フィルムがありますが、それとは別にタッチパネルメーカーや液晶メーカーが生産中に使う保護フィルムという製品があります。実はその市場はとても大きいんです。この製品が生まれたのは、剥がしたときに、絶対に粘着成分が残らないシールを作って欲しいと相談されたことがきっかけでした。そして完成したのが世界初のウレタン系保護フィルムです。このようにお客様のニーズを実現するために作ったところ、実は世界初だったというようなことがありました。ですが世界初とか、誰々のためなど、あまり大それたことは考えていません。お客様が今困っていて、こういったものが欲しいという声にお応えするために製品を開発しています。ですので、デザイナーのみなさんには、機能性フィルムに関して何か困っていることや、こういった製品を作りたい! という思いがありましたらぜひ私たちを頼っていただきたいと思います。
ーー水を使わずに貼ることができる「肌用転写シール」の開発経緯を教えてください。
水を使わずにすぐ貼ることができるタトゥーシールを作って欲しい、というお客様のご依頼で1993年に手がけました。これこそ今コンシューマー向け商品として求められるものなのではという思いから、近年その技術を新たに発掘し、さまざまな製品として展開しています。この製品はわれわれにとって数少ないコンシューマーに近い製品です。これが店頭で販売されることが、社員のモチベーションアップや励みになります。そういったことを含めて大切な製品です。
ーー機能性フィルム「COSMOTAC®」という技術をお持ちですが、それが肌用転写シールの技術の元になっているのでしょうか?
「COSMOTAC®」はわれわれの製品の商標になります。ですので、われわれが作る製品は全てCOSMOTAC®のナンバー何というかたちでご提供させていただいております。あくまで粘着テープなどを対象とし、肌用転写シールに関してはあえてCOSMOTAC®とは言っておりません。
ーー製品はどのようなところに流通していますか?
現在のお客様は液晶メーカー、タッチパネルメーカー、電子部品メーカーなど、ほぼ100% B to Bになります。「肌用転写シール」に関しては、インターネットで販売したり、応援グッズであれば野球場やスーパーマーケットなど売り先はさまざまです。ただ「肌用転写シール」に関しては、お客様のために開発製造したものをお客様自身の製品として販売されたり、オリジナルに関しても別会社名義で販売をしています。
またユニークなところでは、皆さんがお持ちのクレジットカードを郵送する際に使われる、三つ折りの書類とカードを接着するためのシールを作っています。これも実は以外と難しいんですよ。カードを剥がしたら必ずテープは紙の方に残りますよね? しかも輸送中にカードが落ちないようになっています。意外と細かい技術が用いられた製品になります。
ーー独自で開発する接着や粘着技術はどのくらいの試作を重ねて製作されるのでしょうか?
ひとつの製品に関して最低でも200〜300種類の試作を作ります。そのうちのひとつが最終的な製品になります。高分子や粘着の世界にはこれといった明確な理論がありません。ラーメンのスープのようにとりあえず混ぜてみよう、から始まるんです。ですので、試してみてだめだったら廃棄しての繰り返しになります。
ーーまさに職人技ですね。
まさにそうです。経験がものをいう世界です。
ーーものづくりへの思いを教えてください。
当社はいわゆるものづくりを極める職人集団ではないと思っています。結局私どもの仕事は、お客様が本当に必要とされているものをいかにして作るかです。これがいいと思って作ったものに価値があるのではなく、お客様が欲しいと思うものに価値があると思っています。お客様の要求を完全に満足させられるものを作ることが私たちの仕事で、そのような製品こそがいい製品であると考えています。ですので、職人芸を極めようとは思っていません。私たちの仕事はお客様が困っていることがあったら、いかにその問題を解決することができるか、そこにかかっているのです。
ーーそんなところに御社の職人技が極められているような気がします。東京ビジネスデザインアワードでどんなことをしてみたいですか?
当社の強みは特殊フィルムに関して、みなさんのニーズに合わせ、スピーディーにものをつくりだすことができる技術です。しかし新しいニーズを生み出すことや、製品を実際に販売するということは得意としていません。市場のニーズがどこにあって、何を作っていけばいいのかということを考えることもまた苦手としています。特にB to Cに関してはゼロといってもいいと思います。それらを私たちの技術を使って一緒に考えていただければと希望しています。ここ数年の会社方針は「外部連携」です。われわれだけで新しいビジネスを作ることは不可能です。私たち自身にとってのチャレンジは、いかに異なる発想をもった方と連携することができるか。そのことを一生懸命考えている時にこのアワードに出会い、応募しました。
ーーどのようなデザイナーとものづくりをしてみたいですか?
今回、プレゼンテーションや工場見学で実際にデザイナーの方と触れ合う機会をいただきました。その際に意見交換をさせていただいた中でも、われわれがこれまで一度も受けたことのないような質問をたくさんいただきました。それだけでもデザイナーの方の視点は私たちのものとはまったく違うと驚いています。私どもの製品や技術はこれまで裏方としての存在にすぎませんでした。ですが皆さんのお役にたっているという自負はあります。私たちの技術を使っていただき、世の中に貢献できて売れるものを一緒に開発してくださる方と出会うことができれば嬉しいです。
株式会社コスモテック(立川市) http://www.cosmotec.ne.jp
粘着テープなど新しい機能性フィルムの開発・製造・販売までを一貫して行う。高分子化学技術と高度な加工技術により、様々なニーズに応じた提案が可能。独自の技術を駆使し開発された機能性フィルム「COSMOTAC®」を展開する。
写真とテキスト:加藤孝司 Takashi Kato
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2016年度東京ビジネスデザインアワード
募集期間 11月4日(金)まで
応募資格 国内在住のデザイナー、プロデューサー、プランナーなど
応募費用 無料
詳細は公式ウェブサイトをご覧ください
http://www.tokyo-design.ne.jp/award.html