テーマ企業インタビュー09:稲元マーク株式会社
2016年度東京ビジネスデザインアワード
「東京ビジネスデザインアワード」は、東京都内のものづくり中小企業と優れた課題解決力・提案力を併せ持つデザイナーとが協働することを目的とした、企業参加型のデザイン・事業提案コンペティションです。
企業の持つ「技術」や「素材」をテーマとして発表、そのテーマに対する企画から販売までの事業全体のデザイン提案を募ります。2016年度は、テーマ11件の発表をおこない、11月4日(金)までデザイン提案を募集中です。
本年度テーマに選ばれた11社へのインタビューをおこない、技術についてや本アワードに期待することなどをお聞きしました。
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金属の美しさと機能を活かす繊細な加工技術で品質をつくりだす
稲元マーク株式会社
お話=代表取締役 稲元博氏
金属特有の美しい輝きや素材としての強さはとても魅力的である。東京の下町でものづくりをする稲元マークは、自動車や家庭電気機器などの外装部品を手がける総合メーカー。創業から53年の伝統に裏打ちされた多彩な加工技術は国内トップクラスの世界に誇れる技だ。そこにクリエイティブな感性が加わることで、現代の工芸品ともいえる、キラッと光るものづくりができるだろう。
ーー創業年を教えてください。
昭和38年7月からになりますので創業して53年になります。父が創業者で私が二代目です。
ーー昔ながらの下町の工場という佇まいが昭和生まれには懐かしく感じますが、創業時からこの場所ですか?
いえ、ここに引っ越してきたのは40年ほど前になります。それまではここから歩いて5分ほどの場所にあり、工場を拡張するにあたって現在の場所に移転しました。このエリアは、今でこそ通りにはマンションが建ち並んでいますが、昔は中小企業の工場が多いエリアでした。当社がこの場所に移転してきた頃をピークにどんどん工場がなくなり、今は民家の方が多いと思います。ですが、昔も今も地域の祭りがとても盛んで、下町らしいにぎわいがある場所です。
ーーお仕事内容について教えてください。
主にアルミニウム板を絞って、旋盤切削し製品を作ります。カーオーディオ、デジタルカメラ、ホームオーディオに使われる金属製の加飾部品、いわゆるパネルやプレート、キャップ、ネームプレート、レンズフード、レンズリングなどを製作販売しています。プレスから切削、印刷、ダイヤカットやASSYを自社工場で一貫製造できるのが強みです。
ーー素材はどのようなものを扱っていますか?
得意としている素材はアルミニウム、そしてステンレスと鉄です。一番需要があるのはアルミニウムで全体の8割を占めます。
ーー製品作りに使用している機械はどのようなものですか?
プレス機、旋盤切削機、ダイヤカット、レーザーマーカ、ボンドや両面テープで品物を接着する圧締(あってい)を行う機械などがあります。
ーー得意とする技術を教えてください。
旋盤切削、プレス加工、ヘアライン仕上げ、金属感を残した表面処理のアルマイト加工、製品の安全性を高めつつデザインクオリティを向上させるダイヤカット加工でさまざまなデザインを生み出すことができます。またそれらを組み合わせた独自の加工技術も得意としています。レーザーマーキングは、レーザー照射により製品に永久的に消えない文字や図案などを刻印する技術です。同じ敷地内にある印刷工場ラインでは、シルクスクリーン、パット印刷、オフセット印刷により部品への印刷もできます。
ーー独自の複合加工技術を可能にする一貫製造の利点は何でしょうか?
一般的に製品づくりの過程では、工程ごとに工場が分かれているので、どこかでミスが起こると責任の所在が不明になり、改善もなかなか進みません。その点、私たちが得意とする社内での一貫製造は、各工程の責任がはっきりしています。なので、何か問題が起こったときにも速やかに改善でき、間違いや対策についても正直に話し合うことができます。結果として、不良率の低減につながり、お客様にとってもメリットがあると思います。
ーーものづくりに丁寧に向き合う姿勢は、企業として最大の強みですね。
そうなれるようにいつも努力しています。とにかく品質重視で、仕上げの綺麗さを確認して次の工程にまわすことを心がけています。お客様に満足していただける、最高のクオリティをもった製品を作り続けるための努力は惜しみません。10年以上の経験を持つベテラン職人たちの存在もまた、最高の品質を支える当社の強みといえます。
かつて中国を中心に製造業の拠点のほとんどが海外に移っていき、各社コスト競争になる中で、日本がこの分野において誇ることができるのは、品質の高さでした。当社でも、海外他社にまわってしまった仕事を、最近になってあらためて受注させていただくということが起こっています。主に国内では高級品が中心になりますが、金属パーツの品質に関してはどこの国の製品にも負けない自信があります。
ーー社訓に「最大の企業より 最良の企業を目標にする」とありますが。
当社は外観部品といって、製品になったときに特にお客様の目に付く部品を作っています。製品をより輝かせるものを作りたいと日々考えながら、時にお客様に提案しながらものづくりをしています。当社の最大の強みはどこにも負けない「綺麗な」部品を作れることです。その綺麗さとは「品質」に繋がります。その結果、お客様に喜んでいただけると、作っている私たちもとても嬉しい気持ちになります。苦労して作ったものをうまく量産に結びつけられたときの喜びも大きいですね。
ーー東京ビジネスデザインアワードでどんなことをしてみたいですか?またどのようなデザイナーとものづくりをしてみたいですか?
金属ならではの見た目の美しさと機能性を兼ね備えた製品のアイデアを期待しています。
これまでデザイナーの方と直接仕事をしたことがないので、初めてのことばかりですが、当社の技術を活かした製品のアイデアを一緒に考えていただける方でしたら嬉しいです。
稲元マーク株式会社(江東区) http://www.inamoto-mark.co.jp
様々な金属材料をプレス・切削・ダイヤカット・ヘアーライン・アルマイト・塗装・印刷・レーザーマーカ等の多様な加工を駆使し、車の内装やデジタルカメラなど電機機器の外装に使われる高級感ある加飾部品へと一貫生産する。
写真とテキスト:加藤孝司 Takashi Kato
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2016年度東京ビジネスデザインアワード
募集期間 11月4日(金)まで
応募資格 国内在住のデザイナー、プロデューサー、プランナーなど
応募費用 無料
詳細は公式ウェブサイトをご覧ください
http://www.tokyo-design.ne.jp/award.html