取材先:
今野梱包株式会社(宮城県石巻市) 代表取締役社長 今野 英樹さん

宮城県石巻、東日本大震災でも大きく被害を受けた町だ。この石巻で紙加工業を営む今野英樹さんによるtwitter投稿が昨年末に大きく「バズった」。

スタイリッシュでラグジュアリーなスポーツカーがコンビニの前に駐車する写真、それだけで違和感はあるが、よく見ると素材が違う。まるでCGの世界から飛び出してきたようにも見える、これが今野梱包による段ボール製スーパーカーモデル「ダンボルギーニ」だ。

今野さんは今野梱包の3代目。2010年に社長就任したその翌年に東日本大震災にあった。仕事も盛り上がってきたところでの被災、震災3日後から発電機を回し必死で工場を再開させ、震災から2週間で小学校の臨時教室に段ボールで作った家具を納品した。その後も段ボールを使った教材「防災ジオラマ」など、災害に備える活動に力を入れている。

ダンボルギーニ、臨時教室の家具を作った素材は10年前から採用している強化段ボール「トライウォール」だ。加工のしやすさや多彩な用途に可能性を感じ、CADやカッティングマシーンを積極的に導入・実験してきた。そして、2015年にはトライウォールを加工した展示台でグッドデザイン賞を受賞。2016年はこれまでの功績を認められ地元商工会議所による「石巻大賞」を受賞した。

震災直後は多くのボランティアや移住者が訪れた石巻だが、今野さんによると最近では若い人たちの流出が再び始まっているという。それは魅力ある仕事がこの地域にあるにもかかわらず、若者に興味を持ってもらうことをしてこなかったからだと考えた今野さんは少年時代からの夢であったスーパーカーを段ボールで製作する開発に着手した。「夢を持って工夫すれば必ず実現する!面白いことができる!」それを体現するためだ。

「デザインによって見た人にどれだけ驚きと感動を与えられるかが一番重要だと思っています。結果的に人を笑顔にすること、直感に訴えかけるデザインを目指しています。一方で、それを実現するためのコスト、時間、環境への配慮など要件を満たすこともデザインです。全てが包括されたしくみのデザインです。私はデザインの勉強をしたわけではないですが、いつも人の喜ぶことを考え工夫し、設計しています。」

ダンボルギーニは話題を呼び、ランボルギーニ本社へもその評判は届いた。注意勧告を受けるのかと思いきや、意外にもそれは実車との共演というプレゼントだった。いま、ダンボルギーニは女川の今野梱包ショールームで観光客を迎え入れている。子どもも大人も目をキラキラさせて対面できるダンボルギーニが、都会と女川・石巻をつなぐ導線になればと今野さんは期待している。

link: 今野梱包株式会社

今野梱包による段ボール製スーパーカーモデル「ダンボルギーニ」

2015年にグッドデザイン賞を受賞した段ボール製の展示什器。

グッドデザイン賞受賞展で使用された。→受賞情報ページ

震災から2週間で小学校の臨時教室に段ボールで作った家具を納品。子どもが笑顔になるデザインを心がけた。

地域の避難導線を確認するための段ボール製教材「防災ジオラマ」。

現在、香港のGOOD DESIGN STOREで開催中の企画展に今野梱包が出展されています。6月11日には今野社長による講演も開催されます。

GOOD DESIGN STORE PMQ Gallery 19th Exhibition
MATERIAL X DESIGN
Expanding the Possibilities of Heavy Duty Cardboard ‘Tri-Wall’ by Design and Collaboration

会期: 2016年6月3日(金)- 7月14日(木) 12:00-20:00 無休
会場: GOOD DESIGN STORE    - H401, PMQ, 35th Aberdeen street, Central. Hong Kong.
展示: 「強化ダンボール製組み立てテーブル」(今野梱包株式会社)をはじめとするトライウォールを使ったクリエイション

→詳細情報ページ

(取材・文: 日本デザイン振興会 鈴木紗栄)