覗き見えるか、2030年への希望・・「未来を変えるデザイン展」がスタート
「未来を変えるデザイン展」では、日本企業を中心とする19社がそれぞれ展開中の事業について紹介されている。そこでの共通テーマは「ソーシャルデザイン」であるという。ここ最近よく見聞きする「ソーシャルデザイン」だが、人が目にしたり手にしたりできるものごとのすがたかたちの発案や操作をおもな対象としたデザインとはまったくの別物と考えた方がよい。ひとまず、社会を成立させるための施策や事業を効果的にプランニングして組み立てて(実現させて)いくこと、いわば「はかりごと」にあたるものとして理解しよう。「未来を変えるデザイン展」の会場で紹介されている各社の事業=「はかりごと」は、どちらかといえば本業そのものというよりは、本業に付随する活動であったり、本業とは別のベクトルで取り組まれる活動が多い印象を受ける。個々の事業内容自体は、社会貢献活動や市民運動的な色彩を帯びたものであって、以前なら世の中で明らかにオルターネイティブに位置づけられた類いのものである。しかし、いまや各社にとってそれらは決して傍流ではなく、むしろ将来的にはこうした方向性や姿勢を伴った事業=「はかりごと」こそが企業活動の本流になるだろう、という視点がこの企画展を支えている。企業がもつ経営資源・資産・実積・定評などをフル動員することで、社会の課題を解決(改善)することが叶うという提起だ。いささか理想先行な展望にすぎるように感じられる半面、こんにちの世相や社会のインフラ整備状況、地球環境をめぐる状況などを顧みれば、あながちロマンチシズムとはいえない実効力を持ちうるのかもしれない。かつてのオルターネイティブが、インフラとツールの発展によって活動の主体者が情報の受発信のネットワークを飛躍的に広げた結果、いまや洗練された様態を示し、社会の関心や共感をひろく得られるようになってきている。このような状況が「ソーシャルデザイン」という表現によって流布されることで、デザインという言葉がもつある種の魔術性もあいまって“何かいいことがありそうな/できそうな気”がさらに醸成される。はたしてその「気」は「はかりごと」として結実して、これからの社会のありようを導く原動力となるのだろうか?「未来を変えるデザイン展」の会場に並ぶユーモラスな風体の什器から覗き見えるものが何であるかをぜひ考えてみたい。
なお、会期中に関連企画としてワークショップやセミナーなどが複数回にわたり予定されている。その中には一般に参加できるものもあるので、関心があれば「未来を変えるデザイン展」公式ホームページを参照してほしい。さらに、会場では受付で配布されるハンドアウトをぜひ持ち帰って、各社の事業内容について理解と関心を深めることをお勧めしたい。
(秋元淳/JDP)
未来を変えるデザイン展
BUSINESS with SOCIAL INNOVATION in 2030
会場:東京ミッドタウン・デザインハブ(港区赤坂9-7-1 ミッドタウン・タワー5F)
6月11日(火)まで
11時—19時(最終日のみ12時で終了)
会期中無休/入場無料
公式ホームページ
http://mirai-design2013.jp/