事業紹介
日本デザイン振興会のシンボルマークは、1973年に京都で開催された「世界インダストリアルデザイン会議」を記念して亀倉雄策さんによってデザインされたものです。
このマークのモチーフは「波紋」です。この会議から波紋が広がり、デザインへの理解が進む。そのような想いを込めてデザインされました。この会議のサポートから本格的に業務を開始した、創設されたばかりの日本デザイン振興会(当時)は、まさに「波紋を広げること」を役割としてこのマークを引き受けました。
以来、約40年が経過しました。その間に日本のデザインは、対象とする領域や規模、内容を大きく発展させてきました。当会はグッドデザイン賞などを通じてこの発展と伴走してきましたが、その活動も当然のように変化してきました。大きな変化のひとつは、振興の対象が産業だけではなくなったことです。サプライサイドからディマンドサイドへと向かう時代の潮流に対応し、振興する対象、つまりデザイン自体も、モノのデザインだけではなくなりました。サービスやシステム、仕組みなどのデザインも「見えないデザイン」として認識されるようになりました。最近では、日々の生活を営むこともデザインであるとの意識も芽生えています。
当会の役割は、今も「波紋を広げること」です。しかし、それはサプライサイドからの波紋だけではなくなりました。企業、デザイナー、教育機関、公共機関、政府や自治体、さらには個々の生活者までもがデザインのプレイヤーとして登場してきたのです。さまざまな立場から投じられる波紋を広げていく。そして、それらが重なり新しい潮流を生み出すのを支援する。それはオープンタイプのプラットフォームづくりとも呼べるものです。
こうした新しい形の振興活動を「むすぶ」「ひろげる」「そだちあう」という3つのキーワードを用いて整理しました。このキーワードに即して、現在進行している活動を紹介します。
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「むすぶ」活動
当会の活動は、すべてにおいてデザインを通じてさまざま立場の方々を「むすぶ」ことからスタートします。その代表的な事業が、東京都と協力して進める「東京デザインマーケット」です。
東京都には約60,000社のモノづくり企業があり、一方ではデザイン事業者も多数活動しています。この両者を「むすぶ」ことができれば、もっと新しい商品やサービスを生みだすことができるはずーーこの事業は、そうした発想から生まれました。意思を持ったデザイナーを選び、そして多くの中小企業が参加するビジネスフェアで優れたデザイン提案を展示する。マッチング型の事業としてシンプルなものですが、2004年の事業開始以来、着実に成果を上げ、グッドデザイン賞を受賞するものも多数登場しています。近年ではこの事業で得たノウハウをもとに、香港で毎年行われるデザインビジネスイベントBODW(ビジネス・オブ・デザインウィーク)に参加するなど、日本のデザイナーと中国の企業を「むすぶ」活動にも着手しています。
ここでの課題は、日本のデザインが成し遂げてきた成果、つまり商品や広告、宣伝、店舗などのデザインを、どのようにして商材として流通させるかです。それは製造業とデザインのマッチングというより、コンテンツを提供できる日本のデザイナーが要となり、金融や流通、コンサルタントなどのサービス業までもが連携する場づくりだと考えられます。今後も国際的な連携のもと、新しい形のクリエイティブ・インダストリーを生むプラットフォームづくりを進めていきたいと考えています。
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「ひろげる」活動
2007年春、「東京ミッドタウン」へオフィスを移転したのを期に、同じ志をもって同所にオフィスを構えた日本グラフィックデザイナー協会、九州大学・芸術工学東京サイト、そして東京ミッドタウンを運営する三井不動産と連携し「デザインハブ」という新しい振興のスタイルを発足させました。これに、海外のデザイン研究教育機関との連携拠点として設立した「インターナショナル・デザイン・リエゾンセンター」が加わります。
発足当初は当会だけが振興活動をしていたものが、今では多くの企業や団体、デザイナーたちがデザイン振興を担う時代となりました。私たちはこうした活動を展開する方々を「むすぶ」。そしてデザインハブなどの装置を使って「ひろげる」活動を進めています。世界でも類を見ないデザイン振興の環境が整いました。これも、日本のデザインが成熟してきた証です。
デザインハブでは、各国の振興機関やデザイン賞の紹介を通じて、アジアのデザイン活動を「ひろげる」活動を継続的におこなっています。そして、毎年夏には小中学校を対象としたデザインワークショップを開催。デザイナーがファシリテーターとなり、発見の機会を提供することで子どもたちの創造性を伸ばしています。今後は、こうした青少年の育成や国際的な貢献などの公益的活動を中心軸としていきたいと考えています。

インターナショナル・デザイン・リエゾンセンターのウェブサイト
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「そだちあう」活動
私たちの活動の中心は「グッドデザイン賞」です。このデザイン評価推奨は1957年に通商産業省(当時)によって創設された「グッドデザイン商品選定制度」を母体とするものです。1998年に民営化され、当会が主催するデザイン賞として継承されました。今年で55回目の開催を迎えますが、この間に受賞した総件数は、約37,000件になりました。
グッドデザイン賞は、デザインコンクールではありません。優れたデザインを選ぶことを通じて、生活と産業、さらに社会を豊かに実りあるものにしていこうという運動です。「良いデザインは社会を健全に発展させる」「デザインは人々の暮らしのためにある」といった素朴な思想を背景としていますが、この仕組みがなぜ支持され、今日まで発展し続けているのか。それは、この賞が「デザインの運動」であるからに他なりません。
デザインは、明日の生活への想いをかたちに託します。購入者や利用者は、そのかたちに触れることにより、託されたメッセージを読み解きます。そのメッセージが支持できるものであれば、それを手がかりに自分自身の生活をデザインします。つまり、デザインは送り手の側にあるだけでなく、使い手もまたデザインしているのです。この使い手側のデザイン能力が高まることで、送り手も向上します。グッドデザイン賞は、この「そだちあい」を誘導する装置といっていいのかもしれません。
グッドデザイン賞の認知率は87%に達しています。これはデザインを支持する生活者、言い換えれば、デザイン能力が高い生活者が日本に一億人以上いることを意味しています。この質の高い生活者の存在こそ、半世紀を超える日本のデザインの成果であり、今後の日本を支える社会的資産なのです。グッドデザイン賞はこの生活者の支持を背景に、明日の生活と産業、そして社会を描き、「明日を築いていくプラットフォーム」としての役割を果たしたいと考えています。
私たちは、デザインという思想であり方法論が日々の暮らしを支えるだけでなく、社会前提を推進する原動力となることを信じています。
未曾有の不幸を乗り越えていく過程で、私たちは「新しいデザイン」に出会います。そのデザインが生み出す「波紋」を、企業やデザイナーの方々の支援をいただきながら世界へ広げていくこと。公益財団法人としての日本デザイン振興会は、これからもこの活動に取り組んでいきます。




